第10話 狐男との出会い3
キキリは私の睨みに押されてか、
「ま、待ってぇや。今のは冗談ーーではないか。冗談ではないんやけどね。有益な情報はあげることができると思うで! なんと言っても僕は占い師やからな!」
そう言ってキキリは自分の胸を叩いたが、どうも胡散臭い。元から胡散臭いのでどうにもならない、と言った感じだ。
「じゃあ私のこと占ってもらえる?」
それを聞いて苦笑いを浮かべるキキリ。何らかの問題があることが表情に出過ぎている。この男は本当に占い師なのか? ただの5000エルをふんだくった詐欺師ではないか?
「実はな、ロザリア嬢、あんたのことはほとんど占えん。いやいや、待ってほしい! これは僕の問題ではないんや。僕の問題でなく、あんたの問題やな……」
「私にとってはどっちも同じだけど?」
威圧をかけるように、キレ気味で私は言った。
「た、たしかにそうやな。ただ、有益な情報は教えることはできると思うで。まず僕の占い方から説明しましょ。僕の占いは一般的な占い方とはちぃ〜とばかし違う。占いには大きく3パターンあるんや。1、手相や占星術を用いた占い。これはオーソドックスで巷に溢れてる方法で、手相とか生年月日とかから占い師が読み取って、占い師がその人間が言ってほしいことを言ってやる。これはあくまで気休めであり、役に立たない部類だわな。僕はこいつらとは違う」
とキキリは得意げに言った。
元の世界にもあった、普通の占いなのだろう。この世界にも手相や生年月日をベースとした占いがあるということだ。
「2、これは占いと言うよりも未来予知に近く、先読みができる魔法で未来を見るとか、そういうもんや。これができる人間はほとんどいない。残念ながら僕もこれじゃないんや。未来の見える魔法があれば、この国であれば王族お抱えの魔法使いになるか、他の国であれば政府機関の高官になるかーー殺されるかやろうな。あまりに都合が良すぎる魔法は消される。そういうもんや。戦闘力があれば別やがな」
魔法は一人一種類。未来が見える魔法が使えるなら、攻撃魔法は持てない。そして、未来予知系のお約束として自分の未来は見えないことが多い。
「それで、キキリ、あなたはしょうもない占いでもなく、その手の魔法が使えるわけでもないのね?」
「獣人で魔法が使えるのはめったにおらへん。僕も例によって魔法は使えへん。けど、僕には因果の糸が見える」
「因果の糸?」
「そうや。この世界は因果の糸に満ちている。それがルールやろ? いや、あんたはわからんのか。どうやら、ここにはあまり馴染みがなさそうやからな」
アイナは何を言っているかわからない、というような顔をしていたので私は安心する。
「因果の賢者がおるからな。因果の糸を張り巡らせているというわけや」
「その因果の賢者が世界を支配してるの?」
因果の賢者? 私は全く聞き覚えがない。つまり、ゲームの設定にはない。
「あの賢者さんは支配なんてしとらん。あくまで、この世界のルールや。あの賢者さん自体がこの世界のルールっちゅうわけやな。まあ、その伝説上の賢者さんが実在しとるかちゅうと、また話は変わるんやが」
「アイナ、知ってる? 因果の賢者って」
「申し訳ありません、存じておりません……」
キキリはちょっと考えるように視線を斜め上にし、数瞬後、私に視線を戻した。
「あんたら人間は習ってないのか。獣人にはちゃあんと受け継がれているんやけどな。世界の均衡を保つ六賢者の話。数百年前に、大災厄があって六人の賢者がそれを止めたっちゅう話。その大災厄が地震や竜巻と言った天変地異なのか、とてつもない力を持った魔法使いが暴れ回ったのか、あるいは伝説上の生物である魔族が攻めてきたのか、それはわからへん。数百年の時の重みが色々風化させてもうたんや。しょうがあらへんわ。あんたら人間には全く伝わってないようやしな。まあ、ともかく六人の賢者ーー魔法使いやったんかな、知らへんけど。世界を救って今は世界の秩序を保っとるらしい。そんな昔話、信じられへんでもおかしくない。だから、あんたらには伝わっていない。僕も、因果の糸が見えなければおとぎ話としか思ってなかったやろな」
「その六賢者の一人が、因果の賢者なのね?」
「そうや。賢者は二人ずつそれぞれ対になっとると言われとる。因果の賢者と時間の賢者」
「ちょっと何が対なのかわからないわ」
「僕もわからへん。そう言われとるんや。続けるで。秩序の賢者と混沌の賢者」
「秩序と混沌はわかりやすい対比ね」
「せやろ。どんな魔法や力なのかはわからへんけど。そして最後に、生命の賢者と破壊の賢者」
「破壊の賢者?」
破壊の賢者は聞き覚えがなかったが、私にとって聞き覚えがある言葉があった。それはキミパスにおけるラスボス。この世界に破滅をもたらすもの。主人公が打ち倒すべきもの。復活した破壊神を倒すことで、世界に平和が戻るのだ。
「破壊神のことじゃなくて?」
それを聞いたキキリは怪訝そうな顔をした。
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