12.さまよえる未来
ケンジは、夢の中をさまよい続けていた。列車はどこか?駅はどこか?ベータはいないのか?ドヴォルザークは?ベートーヴェンは?誰かいないのか?
ケンジの目の前に、知っている景色が現れた。ここは、小さい頃に住んでいた家のリビングだ。ケンジは徒歩で迷いながら現代駅の近くまでたどり着いたのだ。
台所で、小さい男の子が折りたたみいすに昇り、戸棚のガラス戸を開けた。中から皿を3枚取り出そうとしているようだ。子供は皿の重さにバランスを崩し、皿とともに地面へと転倒した。ガラス戸の蝶番のネジは破断寸前で留まり、子供の頭上へと落下しようとしていた。
これは自分の過去の風景。過去の記憶。落下してきたガラス戸は頭を直撃し、割れたガラス戸で大けがをしたはずだ。
そこで、横から大人の女性の腕がのびた。まるで、ガラス戸が落下することが、事前にわかっていたかのように。大人の腕は男の子の頭上に落下するガラス戸を突き飛ばし、割れたガラスで傷を負った。男の子は無傷であった。
偶然の連続で生かされている。
偶然の連続で命がつながっている。
そして、希望も。
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