6.業の深い人類史の始まり

 明け方、地平線付近に金星が見える。金星の軌道は地球の内側にあり、地球から金星が見えるのは夕方か明け方にかぎられる。明けの明星が留の軌跡を描くその下で、馬小屋からは赤ん坊の声が聞こえた。

 地上の隅々まで人類が広がった。人々は勤勉に働き、祈りを捧げ、繁栄を築いたが、しばらくすると人々が争い始めた。

 なぜ、毎日、勤勉に働いているのに、いつまでも暮らし向きがよくならないのか?なぜ、家族を十分に養うのに必要なパンとミルクが手に入らないのか?なぜ、隣人はいつも、楽にパンとミルクを手に入れられるのか?

 なにか不正をしているのではないのか?

 そうか・・・

 不正をして手に入れたのなら、きっと、奪ってもよいはずだ。


 業の深い人類史の始まりである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る