最終話  『願い』そして……

「大丈夫だよ。私はスイちゃんの事を大切に思っているからね」


いつの日かと同じように―――それが『最悪』とアイちゃんという差があれども―――私の後ろから声が掛けられたが、私が振り向くことはない。


過去に閉じこもっている私には現実未来を見る資格は無いからだ。


「そんな事はないよ。過去を振り返ることが出来るからこそ未来を見なきゃ」


アイちゃんが励ましてくれるが、私には綺麗事にしか聞こえない。


「綺麗事じゃないよ!私は真面目に言っているの!」


だって、私はアイちゃんの””に過ぎなくて、アイちゃんからはよく思われていないだろうからね。


「私は”親友”だと思っているよ!」


いいや、”親友”じゃない。

私が”親友”となることを認めない限り。


”親友”はもう作らないって決めたんだよ。


……あの時シルちゃんたちの記憶が無くなったことを思い出して心が痛むから。


そもそも、アイちゃんは興味本位で私に近づいたんだよね?

あの日、私を生き返らせた時に。


「最初はそうだったけど、今は違うよ!私だって『虚愛』を『友愛』に変えることが出来たんだから、スイちゃんだって出来るよ!」


現実だと、きっと私は自らの世界を滅ぼしているだろうし、やっぱり現実を見るのは無理だよ。


今更、今までの事を変えることなんて出来ない。

過去を消すことは出来ても、完全には消すことは出来ないんだよ。

誰かの記憶に残る限り。


つまり、私は振り向けない。


「なんで、なんでそんなに捻くれるの…?」


そう言い切った私に対して、段々とアイちゃんの声が小さくなっていく。


でも、振り返らない。


「私とは”親友”になれないの…?」


そして、弱々しくなっていき。


「今まで積み重ねてきた思い出によって上がっていた感情はは全て『ニセモノ』だったの…?」


『ニセモノ』かもしれない。

私からアイちゃんへの評価は会った時から一定。

それが事実だよ。


「そっか………。そうだよね。結局のところ『親愛』なんて無かったのかな…」


どこか諦めのような、落胆した声が聞こえる。


酷いかもしれないけど、私はアイちゃんとは”親友”にはなれないと思う。

ごめんね。


こんな捻くれ者の私で。


「………ん…?あれ……?なんで私はこんなに悲しいのかな…。おかしいよ。ほとんど一人ぼっちでも平気だったのに、”友人”が”親友”に成れないぐらいで泣いてる」


嗚咽とともに聞こえたアイちゃんの声は、悲しそうだった。


私も何故か心が痛む。

今までの事は本心から言ってなくて。



本当は違うのに。



痛い。


ただ、それでも絶対に振り向きたくない。




少しして、アイちゃんは泣き止んだようで、また私に話しかけてきた。


「そういえばあの『最悪』の事件の日、私はスイちゃんの願いを叶えたよね、『本来の現実に居させて』って、願いを。あの願いを叶えて仲間の天使たちと関わることは出来なくても、平和な現実にしたのにスイちゃんは、”夢”に閉じこもるの?」


アイちゃんは私に向かって真剣に話してくる。


「私は”友人”として貴女スイちゃんに言っているの」


”親友”でない所に心がズキズキする。


「スイちゃんはどうやったらここから出てくれるの?」


………。


何も言う事が出来ない。


「ねえ……スイちゃんは私に何をして欲しいの?」


話している間に、また涙ぐんできたようで、微かな嗚咽が聞こえる。


私は……。


私は現実が怖いだけなんだろう。


そんな時に寄り添ってくれる人が欲しいのかもしれない。


………。そんなもの最初っからあったのに、なんで気づけなかったのかな。


「”愛”」

「……何?」


困惑しているアイちゃんに畳み掛ける。


「アイちゃん、私、気付いたの」

「うん」


私は、覚悟を決め、言う。

本当はそんな資格など無いかもしれないけど。

アイちゃんとなら…。


そして、私は―――


「アイちゃん、私を現実に連れ出してよ」


続けて、


「私と”親友”になれるようにしてよ」


―――と振り向きながら現実を見ながら言った。


すると、アイちゃんの顔がみるみる笑顔になっていき、私に駆け寄って来た。


「うん!」


そう返事をしたアイちゃんは私の手を取ると、私を『精神世界』から『現実世界』に引っ張った。


「これからもよろしくね!」


❖ ❖ ❖ ❖ ❖


2つの世界の管理はとても大変だけど、今も管理は続けることが出来ている。


翡翠一色で染まってしまった世界は元に戻すのは大変だったけど、なんとか戻すことは出来た。


私の出身世界は、そのまま管理を続けて、邪神を倒すまでに至った。

とはいえ、邪神はあの『魔王』よりも弱かったけど。


『魔王』より弱い邪神って何?って思ってしまったのは仕方のないことだろう。


あ、そうそう、例の逃亡女神さんだけど、幼神落ちしてたからテンコちゃんの世界で修行中だそうな。


自業自得。

サボるのが悪い。



それで、アイちゃんはと言うと。


私の後ろでゴロゴロしている。

アイちゃんの愛玩用分身体(幼女)をナデナデしながら。

分身体の方は満更でも無さそう。


って、違う!


アイちゃんは、私の”友人”から”親友”となった。


前までと変わったことは特には無い。


”友人”にしろ”親友”にしろ、大切だということは変わりなかったのかもしれない。


まあ、ひとまずはアイちゃんが居てくれて良かったかな。


ただ…。


「私は一つ物申したい!」

「何?アイちゃん?」

「いつまで”親友”という関係なの?早く次のステージに進もうよ!例えば、恋愛関係とかさ!」


どうやら、スイちゃんは”愛”というものに疎いのかもしれない。


聞かなかったことにして、私は今日も仕事を続けるのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

どーも、のこじです。

遂に本編完結です!

キャラが暴走して、当初の予定がぶっ壊れました。

30話辺りから更に大爆発しました。

本当は後1章あったんですが、まあ、ミスったってことで。


最後らへん本当にぐちゃぐちゃでした。

読みにくかったらスミマセン。


明日からは、後日談的なモノを投稿する予定です。

毎日更新はストップかもしれません。


忘れてましたが、星くださると嬉しいです!

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