第18話 翌日

「――ん、帰ってきたか」


 意識が戻ると、そこは自室のベッドの上だった。

 どうやら女神のやつに、現実へと戻されたようだ。


 相変わらず自由過ぎるというか、勝手というか……。


 ――しかし、明日イビアを学校に連れていけだなんて、女神は一体何を考えてるんだ……。


 正直に言えば、俺は猛反対だ。そんなことをしたら、絶対に面倒しかないから。

 だからこのまま無視をしてしまいたい気持ちしかないのだが、相手は女神。

 ここで言いつけを無視すれば、もしかしなくてもそれはそれで絶対に面倒なことになる。


『ふふ、そういうことです』

「おい、だから勝手に人の心の声を読み取るなっての」

『まぁ安心してください。悪いことにはなりませんので。ここは騙されたと思って、一度神の言うことを信じなさいな』

「騙されては困るのだが、一応神様だったな。――分かった、言われたとおりにすればいいんだろ」


 どうやら明日からも、色々とありそうだな……。

 そんなことにうんざりしながらも、とりあえずトイレに行きたくなった俺は部屋を出る。


 廊下に出ると、イビアの部屋から灯りが漏れていることに気が付く。

 まだ起きてるのだろうか?

 しかし、あの部屋には布団と机以外何もないぞ……?

 気になった俺は、イビアの部屋へ近づいてみる。


「イビア? まだ起きてるのか?」


 そっと声をかけてみるも、応答なし。

 気になった俺は、女の子の部屋だから不味いかなと思いつつも、何かあったら不味いという方を優先して扉をそっと開ける。


 するとそこには、掛け布団を丸めて抱き着きながら眠るイビアの姿があった。

 これでもかってぐらい幸せそうな寝顔を浮かべながら、気持ちよさそうにグーグーと眠っている。

 こうして見ると、本当に普通の女の子なんだよな……。


 そんなイビアの姿に思わずクスリと笑ってしまいながら、部屋の電気を消してやる。


「おやすみ、イビア」


 異世界からきてまだ一日目だというのに、まったくこいつの適応力はどうなってるんだか。

 まぁそんなところも面白くて、ちょこっと可愛くもあって、見ているだけでつい和んでしまう。


 まぁ、ずっとこうしてイビアを部屋に閉じ込めておくわけにもいかないだろう。

 だからここは、女神の言うことを信じて明日一緒に学校へ連れて行ってみることにしよう――。


 そう決心した俺も、トイレを済ませて今日のところは眠りにつくのであった。



 ◇



「起きろ、イビア」

「……んぁ? なんだ、我はまだ眠いぞ……」

「いいから起きろ」

「うるしゃい……」


 まだ眠いのだ、もうちょっとだけ寝させろ……。

 でも今の声、何だか聞き覚えがあるような……?


 しかし、このフカフカに包まれている今の我は、まだ起き上がるだけのパワーが足りていないのだ……。


 だから、まだ起きたくは……。


 起きたく……。


 ……。


「――って、シンヤかぁ!?」

「そうだ、信也だ」


 慌てて飛び起きると、そこには仁王立ちするシンヤの姿があった。

 なんでシンヤが……って、そうだった!

 我は今、シンヤのいる世界へとやってきているのであった……!


「……お、おはよう」

「はい、おはよう。目は覚めたか?」

「あ、ああ……」

「それじゃ、とりあえず支度しろ」

「支度? どこかへ行くのか?」

「ああ、今日は悪いが俺についてきてもらう」


 な、なんだ……?

 我をどこへ連れていくというのだろうか……?


 それにシンヤの表情も、どこか強張っているように見えるのは気のせいだろうか……。


 でも、待てよ――?


「つまり我は、これから昨日買った服を着て出かけるということだな!?」

「ああ、そうだな。あんまり派手なのは避けたいが……まぁいい、せっかくだから好きなの着てこい」

「分かった!」


 何ということだろうか!

 さっそく昨日買った服を着て出かけられるというのかっ!


 こっちの世界の服は、本当にどれも可愛らしい。

 ずっと魔王をしていたから忘れていたが、我の内なる女の子も大覚醒だっ!


 こうして我は、何をしに行くのかもよく分からないまま、シンヤに言われたとおり服を着替えることにしたのであった。


 -------------

 <あとがき>

 買ったばっかりの服を着るの、ウキウキしますよねw


 次回「魔王、学校へ行く」


 お楽しみにっ!







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