第16話 一日の終わり――
暫くイビアと会話し、俺はこの国の色々をイビアへ教えた。
かつては戦った間でも、今ではお互いろくに魔法も使えない者同士。
特に揉めるような要素もなく、むしろイビアは俺の話に興味深そうに耳を傾けてくれた。
そして俺は、最後にいくつかイビアとの約束事も交わすことにした。
イビアが帰れるようになるまで、とりあえずここで暮らしてくれて構わないこと。
平日は学校へ通わなくてはならないから、その間一人で留守番していること。
それから、この家で生活する以上、イビアにもジョンの面倒を見て貰うこと。
我ながら、随分と緩い約束事だとは思う。
しかし、元々異世界の住民であるイビアに、まだ多くのことは望めないだろうから仕方ない。
まぁその分、ジョンの餌の場所や水の交換など、ジョンに関する必要なことだけは全て叩き込んでおいたけど。
「ぐぁ~、さすがに疲れたな……」
そして今は、自室のベッドの上。
疲労の溜まった身体を、ぐっと伸ばす。
本当に今日は、色々とあり過ぎた。
異世界から帰ってきた翌日に、今度は異世界の魔王がこの世界へやってきてしまったのだ。
普通に考えて有り得ない話だが、それを言うなら俺が異世界へ行った時点で有り得ないわけで。
まぁ考えても仕方がなく、起きている現実が全て。
実際にこの世界に魔王がいるのだから、どうにかするしかないのだ。
ひとまず今日は、魔王に必要なものを色々と買い揃えることができた。
魔王もこっちの世界で暴れることもなく、それなりに日本の文化も楽しんでくれているご様子だ。
まぁあれだ、あいつが魔王であることを除けば、海外から遊びにきている人と同じ。
だからどうせなら、こっちの世界も楽しんでくれたらそれでいい。
そんなことを考えていると、どんどん眠気が増していく。
部屋の電気を消し、布団の中へと入れば今にも寝てしまいそうだ。
――イビアは、大丈夫だろうか。
あとは大丈夫だと部屋へ入っていったが、ちゃんと眠れているだろうか?
……なんて、流石に過保護過ぎるか。
あいつは俺よりも年上で、しかも魔王だ。
いくらなんでも、そこまでの心配は無用だろう。
――よし、俺も寝よう。
明日からどうなるかなんて、俺には分からない。
だから明日のことは、明日の自分に全て任せるとしよう。
今日はゆっくり休んで、明日の自分にバトンタッチだ。
そう思い眠る体勢に入ると、途端に意識が沈んでいくような感覚に襲われる――。
それは眠りにつく感覚とは明らかに異なり、まるで何者かが待っていましたとでもいうように、無理やり意識を引っ張ってきているかのようだった――。
その力に抗うことはできず、俺の意識はそのまま深い底の方へと引きずり込まれていくのであった――。
――ふと気が付くと、俺は何もない空間にいた。
全てが暗闇に覆われ、ここには光も音も一切存在しない。
文字通り、ここは「無」そのもの――。
これが夢なのか、はたまた現実なのか。
そんなことすらはっきりとしない、何もない空間――。
しかし俺には、この空間に見覚えがあった。
それは一ヵ月ほど前、ここと全く同じ空間へ一度来たことがあるからだ。
すると突然、目の前に眩い光が出現する。
眩しくて思わず目元を手で覆うと、ゆっくりコツコツと足音が近づいてくる。
「お久しぶりですね、シンヤ――」
そして穏やかな声で、名前が呼ばれる。
その声に俺は、やっぱりかと納得をする――。
ゆっくり目を開けると、そこには女神の姿があった――。
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<あとがき>
ついに女神様登場!
ちょっとこの作品、いつまで経っても学校へ通わない問題が発生しているのでタイトル変更しました、すみません……。
旧タイトル「学年一の美少女は、異世界からきた魔王様~勇者として魔王に勝利したら、今度は魔王が日本へ来ちゃったんですけど!?~」
↓
新タイトル「異世界で魔王に勝ってみた。そしたら今度は、魔王が日本へきちゃった件」
まずは魔王様が日本をエンジョイする姿を楽しんで欲しくて、悩みに悩んでこのタイトルにしました!(タイトル決めるのが一番難しい)
ちなみにこのあと、ちゃんと学園ラブコメ化はする予定です。
以上、改めて本作をどうぞよろしくお願いします!
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