第四十一話 静かな夜の火の番

 夕食後は各々就寝となるのだが、もちろん火の番もやらなくてはなりません。

 私達はジェフさんとアクアさんと交代しながら行うのだけど、最初から夜中までの番となりました。

 枝とかもたんまりあるし、冒険者登録時に配られた魔法使い用の冊子を見ながら時間つぶしもできます。

 休める時はしっかりとやすむのも冒険者の仕事だというので、ジェフさんとアクアさんは既にテントに入って休んでいます。


「ワフゥ……」

「ほらほら、タマちゃんは夜ふかししないで寝てなさいね」

「アオン……」


 タマちゃんは何とか頑張って起きようとしたけど、眠気が勝ってうつらうつらしていました。

 健気なタマちゃんに思わずくすっとしちゃったけど、ここは成長するためにもしっかりと寝ましょう。

 グミちゃんに付き添われて、タマちゃんはふらふらと歩きながらテントの中に入っていきました。

 さて、周囲の状況はというと、他の人も真面目に火の番をしています。

 中にはこっくりこっくりしている人もいるけど、初めての野営で気を張っていたのかもしれない。

 そんな中、私に歩み寄ってくる影が。

 誰かと思ったら、あのケイさんではないですか!

 でも、攻撃的な気配は感じないし、まずは相手の出方を見てみましょう。


「隣、宜しいかしら?」

「はい、どうぞ」

「失礼するわ」


 ケイさんは、私が座っている丸太の横に座っていた。

 暫くは私の事を見ずに、じっと焚き火を眺めていた。

 私からも話す事はなく、暫く焚き火の音だけが辺りに響いていた。


「あなた、真面目に指導していたわね」


 ポツリと、ケイさんが私に話しかけてきた。

 私は思わずケイさんの方を向いたけど、ケイさんはじっと焚き火を見ていた。


「私が指導していいか迷う事もありますけど、やるからにはキチンと覚えて欲しいので」

「そう……」


 ケイさんは一言答えると、またもや黙ってしまった。

 再び、パチパチと焚き火の音だけが辺りに響いていた。

 そして、再び静寂を破ったのもケイさんだった。

 すっと立ち上がると、私に背を向けた。


「真面目にやる人は、嫌いじゃないわ。それだけよ」


 ダッダッっと、地面を踏みしめる音が響き、ケイさんは自分のテントの方に戻っていった。

 もしかしたら、ケイさんなりに冒険者ギルドで私に突っかかってきたのを謝ったのかもしれない。

 私は再び視線を焚き火に戻し、そんな事を思っていた。


 パチパチ、パチパチ。


 焚き火の音を聞きながら、私は冊子を読んでいた。

 こういう静かな夜は、何をするのにもいいね。

 そんな事を思いながら、私はジェフさんと火の番を交代するまで読書にふけっていました。

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