第三十七話 もっと良い二つ名が欲しい
すると、今度はスキンヘッドが仕掛けてきました。
「おらっ!」
ブオン。
何と、持っていた木剣を私に向かって投げつけてきました。
かなりの速さで投げられたけど、私は間一髪避けます。
しかし、この木剣投げがスキンヘッドにとって次の攻撃への布石でした。
「もらった!」
「しまっ……」
スキンヘッドは一瞬にして距離を詰め、木剣を避けて体が硬直した状態の私に向かって思いっきり回し蹴りを打ち込んできました。
ガキン!
「くっ、仕留めそこねたか」
私は咄嗟に魔法障壁を展開して、スキンヘッドの回し蹴りを受け止めました。
私は回し蹴りの威力で少し飛ばされたけど、体はまだまだ平気です。
私が迎撃態勢に入ったところで、ストップがかけられました。
「二人ともストップだ。これ以上続けると、施設に被害が出るぞ」
「「あっ」」
びよよーん。
審判の守備隊員が私とスキンヘッドの間に割り込み、とある方向を指差しました。
何と、スキンヘッドの投げた木剣が石の壁に突き刺さっていました。
木剣って、石に突き刺さるんだね……
流石にこれ以上はまずいと思い、私もスキンヘッドも戦闘態勢を解きました。
そして、お互いに握手をしました。
「流石は守備隊員って強さでした」
「嬢ちゃんも、かなりの強さだったぞ。また手合わせしよう」
周りの人も、私達の健闘を称えていました。
僅かな時間だったけど、かなり良い経験になりました。
「しかし、やっぱりブラッディグローブは強かったな」
ブオン、ドサッ。
このスキンヘッドも、軽口さえなければ良い人なはずだと思いたいです。
私は、またもや不吉な二つ名を口にしたスキンヘッドをぶん投げから治療を再開しました。
「タマちゃん、もっと綺麗でカッコいい二つ名が良いよね?」
「アオン、アオン!」
守備隊員を治療する間、私は時折タマちゃんをもふもふしながら二つ名について話をしていました。
タマちゃんももっと良い二つ名があると言ってくれたけど、相変わらずグミちゃんはカッコいい二つ名だと言っていました。
グミちゃん、私はか弱い乙女なんだよ。
驚いたリアクションで、からかうのはやめてよね。
そして、昼食時にとあるトラブルが発生しました。
「うぅ、腹痛え……」
何と、昼食を作る担当者が食中毒でお腹を壊していました。
昨晩、酔っ払ったまま古い肉を食べたそうです。
私が担当者の治療をしたけど、ヘロヘロな状態でどうしようもありません。
しかも、料理を作れる人が巡回で出てしまっていました。
私もここで昼食を食べる予定だったので、急遽昼食を作ることになりました。
ジュー、ジュー。
「マイちゃん、すまないな。料理までさせちゃって」
「いえ、いい気分転換になります」
「それは助かったよ。足りない食材があったら言ってくれ」
薪釜なのでちょっと勝手は違ったけど、料理自体は問題なく出来ます。
時折守備隊員が私の様子を見に来ているけど、キャンプで料理を作っているイメージでいけば良いみたいです。
因みに、今日は時間もないので肉がたっぷりの野菜炒めにしています。
面倒くさいので、大皿に盛り付けてみんなで分け合って貰いましょう。
付け合せで簡単な野菜スープを出して、栄養もバッチリです。
「こりゃうめーな。ねーちゃん、中々やるな」
「本当ね。シンプルな料理なのに、とても美味しいわ」
味見をしていたから大丈夫だと思っていたけど、守備隊員にも好評でホッと胸を撫で下ろしました。
前世のバイト先でキッチンにもまわることがあったので、料理にはそこそこ自身があります。
「ハグハグ、ハグハグ」
「タマちゃんも、いっぱい食べてね」
「アオン! ハグハグ」
タマちゃんもグミちゃんも、私の作った野菜炒めを満喫していました。
美味しいって食べてくれるのが、料理を作った人にとっては何よりのごちそうです。
こうして予想外のアクシデントもありつつ、何とか初めての守備隊での治療を終える事ができました。
今度の休みの日に、料理道具を揃えようかなと思いました。
野菜もお肉も、魔法袋に入れておけば腐る事もありません。
因みに、不吉な二つ名はその後も消える事はなく、時々呼ばれる事がありました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます