第七話 宿兼食堂で昼食をとる事に
一分ほどチェックを行った後、再び受付の女性に声をかけられた。
「では、この球体に手を乗せて下さい。真偽チェックと、認証登録を行います」
受付の女性は、コードに繋がれた直径十センチ程の透明な球体を私の前に置いた。
私は右の手を球体の上に置いたが、この時点では特別何も起こらなかった。
「では、確認を行います。球体が光りますが、動作の一種になります」
そう言って、受付の女性はタブレットみたいな魔導具を操作し始めた。
すると、球体が白く光り輝き始めた。
結構な明るさに私とグミちゃんは一瞬ビックリしたけど、受付の女性は何事もないかの様にタブレットみたいな魔導具を操作しているので、問題は起きていないみたいだ。
そして、別の装置から一枚のカードが出てきた。
「登録完了しましたので、手を離して頂いて結構です。こちらが冒険者カードになります。カードは無くさない様にして下さい。再発行には手数料がかかります」
受付の女性から受け取ったカードを、私とグミちゃんはしげしげと眺めました。
触った感触は普通のよくあるカードみたいだ。
個人情報と冒険者ランクに職業が表面に記入してあり、裏には特記事項欄になっていた。
現時点では特記事項欄に記載がないので、何かがあった際に記載されるのだろう。
続いて、受付の女性が二つの冊子を私に手渡した。
「一つが冒険者の手引です。注意事項や動植物の簡易的な記載などがあります。特に注意事項は必ず一読して下さい。二ツ目が、魔法使い用の簡易冊子です。チェックの際に魔法使いだと分かるケースもありますので、簡単な訓練方法や魔法の種類が記載してあります」
普通の冒険者だと冊子は一つだが、私は魔法使いなので冊子は二つになる。
魔法の種類とかさっぱり分からないので、この魔法使い用の冊子はとてもありがたい。
「冒険者登録は以上となりますが、午後から初心者冒険者向けの講座が開かれます。任意参加ですので強制ではありませんが、初心者冒険者の方には参加される事をお勧めしています」
「講座があるんですね。是非参加したいです」
「畏まりました。建物入口側の部屋で行いますので、必ず冊子を持ってきて下さい」
こういう類の講座は、積極的に受けた方が無難だね。
本で知識を得るのと実際に教えて貰うのでは、経験として大きな差が出る。
昼食を兼ねて、冊子も読んでおかないとね。
私とグミちゃんは、一旦冒険者ギルドの外に出ました。
「さーて、どこでご飯を食べようかな?」
私とグミちゃんは、通りに出てキョロキョロと辺りを見回しました。
すると、教会の隣に食堂があるではないか。
良い匂いもただよってきたので、さっそく食堂に向かいました。
「いらっしゃいませ」
「あれ? シスターさんがカウンターに?」
お店に入ると、修道服を着たシスターさんが出迎えてくれました。
更に、給仕している人もシスターさんです。
思わずポカーンとしていたら、受付にいたシスターさんが理由を教えてくれました。
「お嬢さん、ライザンツ子爵領は初めてですか?」
「あっ、はい。今日来たばかりです」
「まあ、そうですか。ここは教会直営の食堂兼宿屋で、孤児院出身の子が将来働けるようにと勉強の場としているのですわ」
なるほど、一種の職業訓練なんだね。
とっても良い制度だし、しかも宿まであるんだ。
「えっと、昼食とできれば宿もお願いきます」
「畏まりました。ここでは、先に注文とお会計を済ます形になります。宿は、奥にある別のカウンターにて対応します」
「ありがとうございます。えーっと、ミートパスタをお願いします」
ここは無難な料理にしておこう。
暫くこの街にいるのだし、全料理制覇を目指しちゃおう。
お金を払って、私とグミちゃんは席に座りました。
さてさて、料理が来るまで冒険者と魔法使いの冊子を読んでおかないと。
ペラペラ。
「書いてあるのは常識的な事が多いね」
グミちゃんも私の肩越しに冊子を読んでいるけど、内容は常識的なものだった。
人を殺めてはいけない、人の物を盗んではいけない、冒険者ギルドや依頼先で騒ぎを起こしてはならない、他人の成果を盗んではいけない、などなどだった。
冒険者って粗暴で野蛮な人が多いのかなと、かなり思ってしまった。
「ランキング制度はないので、初心者でもある程度の依頼は受けることが出来る。ただ、重要な依頼などはほぼ指名依頼や制限依頼になる。となると、指名依頼を受けられる様にならないと大金は手に入らないって事か」
私は大金を手にするつもりはまだないので、まずはできる依頼をコツコツとやっていかないと。
でも、この世界は魔法使いが珍しいから、いきなり指名依頼が入るかもしれないなあ。
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