第13話 歓迎の宴の前に
いよいよだ!
別にイヨさんからお客様が来る時間を教えて貰ったからという駄洒落では決してない!!
そう、本日の午後3時頃には3艘の船が港の見える位置に来るとイヨさんから教えて貰ったのだ。
横に暇そうにしてる絶世の美女がいるが……
「ちょっとリョージ! 昨日、この地の一部の領民たちに晩御飯を振る舞ったそうじゃない! 何で私を呼ばないのよっ!!」
私の横でそう
「リヴァイ様…… 領民たちがリヴァイ様と同席で食事をして味の感想を言えるとは僕は思わなかったので、今回は涙をのんでリヴァイ様をお招きするのを止めにしたのです。勿論ですがこの埋め合わせは致します。来られる客人の為の歓迎の宴を行いますので、その時に是非ともご同席下さい。逸品のワインも5樽ほど用意しておりますので」
どうだ! これならばリヴァイ様もご機嫌を直されるはず!
「フッ、さすがリョージね。いいわ! 私がそのワインが本当に逸品なのか確かめて上げるわっ!!」
チョロい、チョロいぞ、リヴァイ様。92回目に転生した時は私は女性でスパイであったが、その時に引っ掛けた各国の軍人たちよりもチョロい。
しかし、そこに思わぬ伏兵がいた。
「リョージ様…… 招かれるのはリヴァイ様だけでしょうか? ワタクシは…… その時はどこで待機しておけば良いのでしょうか? 聞けば同船しているワタクシの部下たちもお招きするおつもりだとか…… ワタクシのお仕えする
私は大慌てでフォローを入れる。
「イヨさん、何を仰ってるんですか。リヴァイ様をお招きした時点でイヨさんもお招きしてるに決まってるじゃないですか! 言葉に出さずとも伝わると思った僕の失敗ですが、当然のことながらイヨさんにもご出席いただきますよ! スペシャルスイーツもありますから!」
「フフフ、左様でございますか…… ワタクシも同席しても良いと…… フフフ、スペシャルスイーツ、ワタクシが吟味してさしあげます」
イヨさんもチョロくて良かった…… というか、バハムル様は色んな種類のお酒、ファーヴニルさんは肉料理…… 竜種、チョロいなって考えているのは絶対に墓場まで持っていく秘密だ。
「ちょっとイヨ! 私だってスペシャルスイーツを食べたいんだからね!」
「いいえ、リヴァイ様はワタクシの毒味が済んだ後でございます」
「リョージが私に毒を盛るわけないでしょっ!!」
喧々諤々と言い合う2人をよそに、私は更地を作るべくどんどん木々や雑草、岩を収納していった。木々については20本ずつぐらいを必要だとする各ギルドに卸す事になった。セバスとユリが話をつけてくれたようだ。
そして、港町クーレの防壁の内側を全て更地へとしてからリヴァイ様にお願いをする。
「リヴァイ様、もしもよろしければ領都カラムまで転移で送っていただけないでしょうか?」
「あら? まだ宴の準備をしなくても良いの? もう11時よ」
リヴァイ様にそう言われるが、到着が午後3時頃でそこから上陸されて迎賓館にご案内して、宴自体の始まりは午後6時頃を予定しているのだ。
それに料理自体は私の収納から取り出すだけなので午後5時半から準備を始めても十分に間に合う。なのでその前に防壁の内側を更地にしてしまおうと朝から頑張っていたのだ。
どうせならばお客様たちにも広くなった状態で見て貰いたいから。
防御柵については既に領民たちによって解体されているので、後は元柵があった場所から防壁までを更地にすれば良いだけである。
オーガやゴブリンの人たちと獣人たちの一部の人たちは魔獣の間引きをしてくれるという事なので、その更地部分に新たに家を構えてもらおうという考えもあった。
それについては父上と母上からも言われており、急務とも言える。私はその事をリヴァイ様に説明をした。
「そうなのね、分かったわ。リョージ、それじゃ宴が始まるまで私とイヨが貴方の側に着いてて上げるわ」
いえ、送っていただくだけで良いのですが…… さてはお駄賃目当てですね。分かりましたよリヴァイ様、イヨさん。
私はリヴァイ様の横でニコニコ笑顔で頷いているイヨさんの思惑も正確に読み取り、よろしくお願いしますと言ったのだった。
「リョージ、服装はこんなもので良いだろうと思うぞ。って、海竜様にイヨ殿! またリョージに着いていて下さったのですか!? お忙しいのに本当に有難うございます!!」
リヴァイ様の転移により領都カラムに着いて一部を更地にした後にお昼時間となったので昼食にしようと思い屋敷へと戻った私たち。
そこでお客様をお出迎えする際の私の服を手に持った父上がリヴァイ様とイヨさんに気が付きそう言った。
父上、このお2人は私といると美味しい物が食べられると言う食欲に支配されて着いてきてるだけなんですよ…… と言える訳もなく、私も父上に言う。
「はい、父上にお知らせした後に僕の所にも来られてお知らせしてくださったのですが、僕が1人だと例え領地内であっても何かあってはいけないと着いてきて下さっているのです。父上、リヴァイ様とイヨさんも宴に参加をお願いしました。そこで我が領地は海竜様の守護の元にあるんだというアピールも出来るかと思います」
と、私がそう言った時だった。
「ちょっと待てーいっ!! 守護しておるのは我が妻だけではないぞ! 余を忘れては困るな、ソージにリョージよ!」
絶対に覗いてらしたんですよね、バハムル様。
「ちょっと、また覗いてたんでしょう!」
リヴァイ様のツッコミにも怯むことなくバハムル様は父上に言う。
「加護というならば余が先にソージとアンナ、他の者たちに加護を与えたのだ。ならば…… 分かるな、ソージよ」
威圧を込めて自分にも酒を呑ませろって要求する竜種の王…… 訳を知らずに見たならばその威厳にひれ伏すだろうけど、父上もバハムル様の真意は見抜いておられるからなぁ……
まあ、それを表に出す父上では無いけれども。
「勿論です、竜王様。ファーヴニル殿とご一緒に宴にご参加ください!」
「あっ、バカ! ソージ、その名を出したらダメじゃない!」
リヴァイ様が父上にそう言うが時すでに遅し……
「お呼びですかな、ソージ殿」
やっぱりファーヴニルさんもやって来たよ。イヨんが【スんっ】となって表情を消した。いつかこの親子の確執を聞いてみたいな。
「宴となればスタッフが必要でございましょう。ご安心ください、リョージ殿。リョージ殿が給仕の者たちを手配しておられるのは既に覗いて確認済みですので。私が手配したのはその方たちでは手が足りなかった場合の補佐要員でございます。8名ほど宴に連れていきますので、手が足りぬ時は使ってやってください」
それは有難いですけど…… 竜種の方なんですよね? 人である私たちの指示に従ってくれるのか?
「あの、僕たちは人ですがその8名の方々は指示に従ってくれるのですか?」
疑問をそのままファーヴニルさんにぶつけた。
「フフフ、その点も心配いりませんよ、リョージ殿。私の作り出したホムンクルスですからな。いわば人のように見え、人のように動き、人のように考えるゴーレムだと思っていただければ良いのです」
竜種すごいな…… 既にホムンクルスを完成させているのか。前世の地球ではまだまだ何十いや何百年もかかるかかも知れないと言われていたが。
「そうですか、分かりました。その、宴の後はうちの領民になっていただけたりしませんか?」
私はついでとばかりにファーヴニルさんに言ってみる。
「ふむ? 疑似人ではありますが、寿命も人と同様で生殖機能も勿論ありますが…… リョージ殿はそのような者たちでも人と見なせますか?」
「はい、僕は人とは自ら考え行動出来る者だと思ってます。先ほどファーヴニルさんが人のように考えと彼らの事を仰ってました。ならば人とだと僕は考えます」
「素晴らしい! ソージ殿、良きご子息を得られましたな。ソージ殿がよろしいのであればソージ殿の領民としてこの地に彼らの住む場所を与えてやってください」
さすがファーヴニルさんだな。決定権は父上にあることをちゃんと分かっておられる。咄嗟に出た私の言葉だが、果たして父上は何と返事をされるのか?
「フフフ、俺に似ずにアンナに似て良かったと思いますよ、ファーヴニル殿。勿論ですが俺も息子の意見に賛成です。今回、宴を手伝ってくれる8人は宴が終われば我が地の領民として歓迎します。しかし、彼らがそれを望めばという事にしましょう。産みの親であるファーヴニル殿の元に居たいという人もいるかも知れませんのでね」
さすがは父上だ。私はこの言葉で父上の事を更に誇りに思うようになった。
そして、昼食は私の収納から出した物をみんなで食べて、私はまた領都の更地に精を出す。
父上は一足先に港町クーレへと向かった。母上は今日は天使な妹と一緒に屋敷にて待機だ。
明日の朝食時に天使な妹も連れて迎賓館に来ることになっている。
更地にするのは午後2時40分に終わった。私はリヴァイ様に転移で屋敷へと戻してもらい着替えた。
そして、迎賓館へと転移で連れていっていただく。
さあ、本当にいよいよだ!!
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