僕の知る地球産の物が【全て】入ってます

しょうわな人

第1話 151回目は異世界

 私の話を少しだけしよう……


 私の前世の名前は御厨陵司みくりやりょうじ。享年58歳であった。


 その前の名はハーティ·ダリー。アメリカ国籍で享年78歳である。あの頃は44マグナムを片手にバンバンと悪党を撃っていたなぁ……


 更にその前はココという名で、ペルー人であった。太陽神様と共に民を導いていたっけ。


 更にその前はドミトリー·ペトロニヤフという名で、ロシア人であった。KGBなんてものはまだ出来ていなかったが、それでも国の暗部で活躍してたなぁ。


 更にその前は……


 やめておこうか。地球で輪廻転生を重ねること150回。全ての記憶を持って輪廻転生を繰り返した私は地球の神々にしてみても、どうやら異質な存在だったらしい。


 151回目の転生をして授けの儀式に出ていた私は目の前に居る神にそう教えられた。


『あなたは地球で前世の記憶を持ったままでの輪廻転生を繰り返しすぎたので地球の神々によって輪廻転生の輪から放り出されようとしておりました。何故、あなたが前世の記憶を持ったままなのか神々にも不明だったようです。地球の神々は150回も輪廻転生した貴方が全ての前世の記憶を持っている事に不気味さを感じたそうです。そんな貴方の魂を滅しようとしたのです。そこであなたの魂を私が密かに貰い受け、私の創造した星へと転生してもらう事にしたのです。いわゆる地球で流行りの異世界転生でのチートな能力はあげられませんが、あなたがこれまで培ってきた知識に基づき、地球産の物が入っている【収納】を授けます。取り出しても【自動補充】しますので使い放題なのでご安心を。また、家電などの電気が必要な物は私の世界の魔力で動くように改良しておりますので更にご安心を。使命? いいえ、そのようなモノはありません。私の世界でも天寿を全うして輪廻転生を繰り返して下さい。それにより私の創造した星もワンランクアップしますので。よろしくお願いしますね』


「フム…… ところで地球産の物が全て入っているというが、私の知らない物もか?」


『いいえ、先ほど申し上げた通り貴方の知識に基づいておりますので貴方の知らない物は入っておりません』


「なるほど…… 例えば生物はどうだ? 犬や猫、獅子などは生きている状態なのか?」


『はい。【但し】が付きますが……』


(やはりな。その但しとは何だろうか?)


『【但し】は取り出した瞬間に私の星の生物へと自動変換されるという事です。兎ならば種類により角兎や愛玩用のモフ兎に。犬も同様にワイルドドッグやコボルトになったりします。ですがもしもそうなっても貴方には絶対服従しますので危険はありません』


 どうやら心を読まれたようだ。それならば私はスキルとしては持っていないがテイミングという能力を授かった事になるのでは? そう心の片隅で思ったが先ずは気になった事を確認するのが先だと質問を続けた。


「それでは野菜、肉、果物、魚などは?」


『その名は違いますが地球産の物と同じものが多々ありますので、その辺りはそのまま出てくるでしょう。但し、魚は生きた状態ですと先ほど言ったのと同じようになりますよ。例をあげると鯖だとブルービッグマウスフィッシュという魔物ですね』


「そうか。切り身ならば問題ないのだな」


『ええ、その通りです』


「例えばだが、建物なども取り出し可能なのか?」


『貴方の知る建物であれば可能ですね。ちゃんと入ってますから。集合住宅なんかもね』


「取り出すのに私に何らかの負担がかかるとか?」


『無いです。全ては貴方に授けた【収納】の能力となりますので、回収、取り出し、自動補充に貴方への負担は一切ありません』


「車や飛行機、船などはどうなる? エネルギーがこの星にもあるのか?」


『ええ、そちらも魔力で動くようにしてあります。しかも、空気中に漂う私の星の余剰魔力を自動取込しますから給油いらずですね。但し、1年に1回は貴方の収納に入れて下さいね。傷んだ部分を収納内で補修しますので』


「それは私自身は大した事が無くてもかなりなチートじゃないか?」


『そうですね。けれども気にする必要はありませんよ。貴方がこれまでに培ってきた知識を元にしたコレぐらいの収納があれば幸せな天寿を全う出来るというのが私の予見ですから』


(という事は私自身は本当に弱いのなだな……)


『フフフ、そうなりますね。夢を壊すようで申し訳ありませんが。それと、貴方の産まれた国【エルグランド】ではこれから10年後には戦国時代に突入します。貴方は収納を使ってご両親の治める領地を守って上げて下さい。その為の知識も貴方は豊富でしょう?』


「ムウ、確かに軍人として生きた時代もあるが…… この星の戦争のレベルが分からなければどうにもならないが……」


『そうですね…… 対人の飛び道具は弓矢、クロスボウ、ボウガンなど。剣、槍、戦斧、大槌、なんかもあります。投石機はありますが戦車なんかはありません。戦闘機もね。もちろん大砲なんかもありませんよ。肉弾戦だと地球の中世レベルだと思ってもらえば分かりやすいかと思います。ただ地球には無かった魔法があります。それと馬ではなく魔馬が軍用馬ですので地球の馬よりも力も速さも数段上です。そちらはこれからの10年間で実際に目で見て学んで頂く必要があるでしょうね』


「魔法があるのか!? 私にも使えるのか?」


 魔馬よりも魔法というワードに年甲斐もなく興奮してしまった。いや、今は1歳だったな……


『残念ですが貴方が使えるのは生活を便利に送れる、いわゆる生活魔法と呼ばれる魔法しか才能がありません』


「いや!! 十分だ! 魔法を使えるならば!」


 私は大いに喜んだ。派手な攻撃魔法なんかは必要ない。生きていく上で必要な魔法を行使出来るならば何の問題もないからだ。


『そうですか…… 今までにご招待した地球の人はド派手な攻撃魔法を使いたがるのですが。さすがは150回も輪廻転生した人ですね。さて、どうやら時間が来たようです。また何かご質問があるのなら教会で祈ってみて下さい。上手く波長が合えばお応えする事も出来ますので』


「毎回確実にという訳では無いのだな。だが、分かった。用事が出来たなら教会で祈ってみよう」


『はい、それでは。また……』



 そして、私の目の前には祈りを終えた司祭が居た。


「リョージ·ミクリャの神より授けられた技能は【収納】ですな」


「おおっ! そうか! 有難う司祭殿。リョージ、良かったな。【収納】はどんな仕事にも応用が効く良い技能だぞ。創造神様に感謝しなさい。と言っても1歳ではまだ分からんか。フフフ」


「良かったですな、ミクリャ様。領地の発展に役立ちそうな技能をご子息が授かったようで」


「ウム。だが、この子もまだ1歳だ。これからの私の教育によりどうなる事やら…… 何せ私は教育なんかした事ないからなぁ……」


「フフフ、大丈夫でしょう。奥方様がいらっしゃるのですから」


(うん、司祭殿。母上は父上に勝るとも劣らない脳筋だぞ)


 私の心の声に答えるように父上が言う。


「いやいや、司祭殿。俺もアンナも探索者あがりだからな…… 教育なんてどうすれば良いのやら? まあ、何とかしてみるつもりだが」


 父上、地が出て私が俺になってますよ。


「次期領主様ですからな。領民たちも期待しておりますので頼みますよ」


 司祭のその言葉に父上は自信無さそうに頷き私を抱き上げて教会を出た。


「それにしても収納か。ホントに良かった。アンナ

も喜ぶな。今日はお祝いだな」


 どうやら授かった技能である収納はこの世界では当りのようだ。家に戻り父上が母上に私の技能を教えると、


「まあ!! さすがは私のリョーちゃんだわっ!! 収納ならば引く手あまたよ!」


 と大いに喜んでくれた。今世の両親は私を溺愛してくれている。それが少しこそばゆくもあるが、素直に嬉しいとも思う。


 そうそう、私の父上はエルグランド将軍国で首都から500キロほど離れた海に面した領地を任されている子爵である。

 ミクリャ子爵領の面積は約7,000平方キロで、高知県ぐらいの広さだ。

 広さは十分だが、そのほとんどが山林で、危険な魔獣や魔物も多く、領都である都市カラムと港町であるクーレの2つしか人が住んで居ない。というか住めない状態だ。


 父上も頑張って人の住める環境を整えようと母上と2人3脚でやっておられるが、中々うまく行かないのが現状らしい。


 領地で農民から買い上げた小麦などの農作物、漁師から買い上げた魚介類の加工物、また魔物や魔獣を狩って解体して得られた素材を隣領であるヒーメン伯爵領に売っているのだが、どうやら足元を見られて安くしか買取って貰えていないようだ。


 私は1歳になって技能を授かったばかりだが、これからは授かった技能である収納を利用して父上や母上の手助けをしていこうと思う。


 その為には私の秘密をうちあける必要があるが、まだ舌足らずで満足に喋れないからどのように打ち明けようかと困っている……

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