さぁ、俺の罪を数えろ!

秋人聖

01.嵐の晩に

 容赦なく吹き付ける暴風と揺さぶられてミシミシ悲鳴を上げる木々の群れ。


 耳を劈く雷鳴に叩きつけるような横殴りの雨と夜天を切り裂いて暗闇を照らす稲光。


 顔面に感じた上から叩きつけるような風圧とドチャリともグチャリともつかない生々しく耳にこびりつく音。


 足元に突如現れた四肢が在り得ぬ向きに折れ曲がり、半分潰れた顔で横たわる妻と思しき女の体。


 潰れて割れた頭部から溢れるように流れ出す血は豪雨と混ざり女の灰色の髪を錆色に染め上げている。


 恐怖に後退った踵が小石に掛かり、勢いのまま雨と血に濡れた地面にバシャリと尻餅をつく。


 真っ白になった頭でとっさに見上げた先は今にも崩れ落ちそうな程朽ちかけた幽閉塔の最上階。


 はめ殺しだったはずの大窓は大きく開いており、そこから覗く魔女にも鬼女にも見える顔で高らかに嗤う愛人の顔は狂喜に染まっている。


 ――――嗚呼。見たくない。聞きたくない。信じたくない。理解したくない。


 混乱のままに上げた絶叫は数瞬前に鳴った雷音の残響に掻き消され、俺の体は断罪と思しき落雷に貫かれていた。

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