第29話 研究の原点を見せてくれるドラマ『宙わたる教室』

 NHK火曜日の夜11時からやっているドラマ『宙(そら)わたる教室』が素敵です。


 舞台は都立の定時制高校。定時制高校が舞台と聞いて、はは~ん、そう言う話でそう言う感動ね、と思ったあなた、ちょっと待って下さいな。

 確かに、そこに通う生徒は、年齢も境遇もバラバラで、一様に重たいものを人生に抱えていて、と、ある意味、定時制高校を舞台にしたドラマの定石は踏んでいるのですが、それだけではないのです。


 どこが他と違うのかというと、新任の先生がバリバリの理系というところだと、私は思っています。どうやら元は優秀は研究者だったらしいのです(その彼が、なんでわざわざ定時制の教師になったのか、そこはまだ謎です)。

 この先生は、ひとたび何か問題が起きると、まずはそれに関する客観的データを集めます。感情を交えずに、淡々と。で、集めたデータを元に解決策を考える。その態度が、いかにも理系っぽくて、私には面白い。


 以前見た韓国ドラマ『サバイバー:60日間の大統領』も、主人公が理系だからこその面白さがありました。爆発テロで、大統領を始めとする主な閣僚が死んでしまったために、たまたま環境省の長官だった主人公が、60日間だけ大統領を務める話なのですが、この主人公が、研究者であるところが、このドラマの肝だと思います。


 物語の中で、国を揺るがすような大きな事件が次々と起こり、主人公はたくさんの重い決断を迫られます。それまで政治の世界とほぼ無縁だった彼がどうしたかというと、とにかく起きている事件に関わるありとあらゆるデータを大量に集めたのです。その膨大なデータを一つ一つ自分で解析し、解決策を導き出していくのです。

 彼にとっては、自分を操ろうと色んなことを言ってくる人間の言葉ですらも、一つのデータに過ぎず、そこがすごく痛快でした。その感じが似ています。


 さらに、このドラマのもう一つ特徴として、実験のシーンが多い、というのもあります。例えば、第一話では、たばこの煙を使って、なぜ空が青いのか、その再現実験をしていましたし、それ以外に、物語の中で発足した科学部でも、様々な実験シーンがでてくるのです。


 私が、中学や高校の授業で、たま~にやった実験は、大抵、結果が分っているものを確認する実験で、正確に手順を踏めば、ほとんど失敗しなかったと思うのですが、科学部の実験は、未知のものを探ろうとしているので、そうはいきません。何度も何度も失敗します。


 失敗するたびに、生徒達は、悔しがり、あるいは肩を落とします。何が悪かったんだ、どこをどうすれば上手くゆくんだと、悩み考え、文献や専門書を調べ、何とか新しい方法を見つけだし、今度はその方法で実験してみる。そうやってトライアンドエラーを繰り返しながら、だんだん正解に近づいてゆくのです。

 その姿を見ていると、これこそが科学を学ぶって事だ、研究の原点だなんて、なんだか妙に胸が熱くなるのです。


 科学部の生徒達は、先生の後押しもあって、学会発表という壮大な目標に向かって、歩き出しました。彼らが、これから起こるであろう様々な困難を乗り越え、どんな風に成長してゆくのか、とても楽しみです。

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