第18話 三度目の虎に翼の話
『虎に翼』。またまた、胃が痛くなるような一週間でしたよね。誰よりも幸せをつかんで欲しいと思っていた、その梅子さんのその後の試練が続々と明らかにされ、私などは、いても立ってもいられない気持ちでした。
そもそも、私が最初に、フライング気味に『虎に翼』を、朝の連ドラ至上、最高傑作だとわめいたのは、実は梅子さんの存在によってでした。
それは、ハイキングに行った先で、崖から落ちて怪我をした花岡の病院の待合室で、いつもの仲間が話をするシーン。
「あ~あ、とうとう知られちゃった」
から始まる梅子さんの独白は辛く厳しく、しかしながら、当時の多くの女性の立場を表現している様で、とにかく私は怒りながら聞いていたわけですが、彼女が、自分は離婚するために法を学んでいる、と言ったとき、そうよね、法律の知識を持って、なるべく自分に有利な離婚をしないと、この時代、女性一人で生きていけないもんね、と、独り合点をしたのです。
けれど、最後に梅子さんの口から出た言葉は、
「私は、子供の親権がほしい」
彼女のその言葉を聞いたとき、私は軽い衝撃を受けました。私の想像の遙か上を行く発言だったからです。
赤ん坊の頃に義母に取り上げられ、育てることすら出来なかった長男が、尊大で残念な人間に育ってしまったことを、救えなかったと言い、せめて次男と三男だけでも救いたい、そういう言う思いで、法律を学ぼうとしている梅子さんに、今まで出会ったことのない、大きくて深い優しさと強さを感じて、心が大きく揺さぶられ、そういう人物を作り上げ登場させたこのドラマの志の高さに深く深く感動して、それでいきなり、虎に翼は朝ドラ至上、最高傑作だぁ、とわめいたのです。
でも、今週の朝ドラを見ていて、梅子さんの試練はその後もずっと続いていて、信じていた三男も、おつむが良いだけの世間知らずに育っていた、という、残念なことになってしまいました。それをすべて見て取り、自分は全部失敗した、全部間違っていたんだと、負けを認め、恐らくこれまでの自分を含め、すべてを切った梅子さん。
辛いことが多いのに、一度も自己憐憫がなかった梅子さんだからこそ、こういう幕引きが、出来たのだと思います。
そして、またまた、このドラマの脚本のすごいところは、そんな梅子さんにも容赦がないところ。次男に、なぜ俺をおいて出て行ったと詰められるシーンを、ちゃんと入れたところが、本当に素晴らしいと思いました。人間とは、家族とは、こういうものだと、しっかり真実を見せてくれたことが、本当に素晴らしかったです。
金曜日、梅子さんが、轟法律事務所で軽やかに働いている姿を見て、これからは、以前より彼女の姿が見られるのかなと、とても嬉しくなりました。
『虎に翼』。本当に、毎日毎日、ありがとう。これからも、泣いたり笑ったり、怒ったりしながら、見守り続けようと思います。
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