第5話 頼むよ、パンドラちゃん

 昨年あたりから、これまでずっと蓋をして、見ないふりをしていた事、少年への性加害問題や、政治家の裏金問題など、社会のおぞましい事実が、万人の知る事実となって現れました。

 けれども、今、それはリスクマネジメントとか人権とか、そんな耳障りのよい言葉のもと、風化させられつつあるように、私には思えてなりません。


 日本には、臭い物には蓋、という日本古来のことわざがありますけれど、まさにその通りのことが起きようとしていて、私はどうしても悶々としてしまうのです。


 中途半端な状態で蓋をするから、いつまで経っても根本的な解決に向かって動けないし、被害者は救済されない。パンドラの箱は、一度、開いてしまったというのに。

 ギリシャ神話に出てくる、人類初の女性と言われるパンドラが、うっかり開けてしまった箱からは、病気や厄災は犯罪など、この世のありとあらゆるネガティブな物が飛び出しました。でも、箱の一番下には、希望が残っていたのです。すべての膿を出し切った先にこそ、希望が見えてくるではないでしょうか・・・。


 というようなことを言いたいと思って書き始めたのですが、そうだ、私、パンドラの箱について、ちゃんと分っていないな、と気がつき、改めて調べてみたのです。そしたら驚いたことに、パンドラときたら、最後の希望が残った状態で、箱の蓋を閉めてしまっていたのです。


 ええ、うそでしょ! ちょっと、パンドラ、何してくれんの! 話が違う、話が!


 事実を知って、私はうな垂れました。何という皮肉。てか、夢がなさすぎない? 神話なんだから、希望はだそうよ。希望は。とはいえ、ここがギリシャ神話の食えない、というかすごいところなのでしょうね。そもそも、出てくる神様、全部めちゃくちゃだしね。


 私は、希望が好きです。いつも希望を片手に握って、生きていたいです。そうでもしないと、前を向けない意気地無しです。だから、今すぐにでも、パンドラから箱をひったくって蓋を開け、逆さに振って、希望を外に出したい。


 人は、自分の見たい物を見、信じたい物を信じる、と言うけれど、きっと私もパンドラの箱のエピソードを、自分に都合よく記憶していたのだな、と、思います。


 でも、やっぱり膿は出し切り、被害者は救済されてほしい。そして、その先には希望があると、信じたいです。

 

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