第7話 お勉強ですか?無理ですよ?

アイリスがへばりながらも、走ってきて「あ〜可愛い」と思ってしまう。


「もうちょっと休憩しませんか?」


「無理、急がないと本が無くなるでしょ?」


 身分証云々は、いつでも発行出来るのでいいのだが、図書館の本は1冊しかないので早い者勝ちなのだ。


「にしても、外周を走ると大きい街って事が再認識されますね……」


 マジでそれな。やはり商売が栄えている街は掘り出し物が多くあるので嬉しい。


 私たちは門を潜り大通りを並んで歩く。


「はぇ〜やっぱり人は多いなぁ」


 大通りなだけあり、出店や人が多く出ている。少しばかり、寄り道ぐらいなら良いだろう。


「あれ!あれ欲しいです!」


 アイリスが指を指しながら、大きい声で言ってくる。


「どれどれ〜」


 アイリスが指を指していたのは、黒を基調とし、金の十字架が着いているチョーカーだった。


「ほぇ〜アイリスってそういうの好きなんだ……」


「い、いえ決して他意はないですけどぉ、付けてみたいな〜みたいな?」


「いいよ、買ってあげる」


 俺は出店に近づき注文する。


「おっさんこのチョーカー、2つください」


「あいよ……」


俺は1個をアイリスの方に投げ言う。


「これでおそろじゃんね?」


「かわ゙い゙い゙」


 よく見るとこのチョーカー、かっこいいな


「なんだがこれを付けてると、リムちゃんのものって感じがします……」


「痴女発言やめい」


 寄り道をしながらも役所につく。役所は意外にも大きく、中世の裁判所みたいな造りになっている。

 俺はアイリスと中に入り、身分証発行のカウンターに行く。


「あの、身分証を発行したいんですけど……」


「はい、身分証ですね。でしたらここにお名前と種族をお下記ください」


「……はい、出来ました」


「ありがとうございます、リムさんですね。今日は母娘で来たんですか?」


「はい!そうです!」


「はい、ではこちらをどうぞ」


 エルフの受付嬢から身分証のカードを受け取り、役所を出る。


「よし、じゃあ次は図書館だね」


 図書館は役所の前にあり、あまり動かずにすんだ。


「おぉ〜広ッ!」


 館内は予想以上に広く、俺の理想の図書館だった。


「ここにある本、殆ど借りれるの?」


「そうらしいよ、奥の方や地下には禁書目録インデックスとかがあるらしいけど……まぁ噂だけどね?」


 よし、いつか忍び入るか……


「所で教材はどこら辺にあるの?」


「ここら辺じゃない?」


「え、絶対違う……」


「じゃあここ!」


「違うな……」


 こんな事を1時間ぐらい……


「やっとありましたぁ……」


「どんだけ広いねん……」


 やっとの事で見つけ、机のある学習スペースに行く。学習スペースでは他の子達も勉強をしていて、皆真剣だった。


「よっし、やるぞ!」


 勉強とは、気合いが殆どだと思っている。

 何かと気合いが入らないと、やる気が起きないから……


 ――――――――――――――


「結構やりましたね……」


 他の子達は帰り、学習スペースには俺たちしか居なかった。


「休憩がてら、探索に行かない?」


「いいですね!ちょうど動きたかったですし……」


 俺たちは、机の教材を片付け立ち上がった。


「んッ〜〜あぁ〜」


「腰が痛い……」


 長時間座っていたから、腰が悲鳴をあげている。


「どこ行こっかな〜」


 館内は広いので行くところが沢山ある。


「ん、そういえばリムちゃんは御伽噺おとぎばなしって知ってます?」


「御伽噺かぁ、聞いた事ないな……」


「そうですか、おすすめのお話があるんですよ!」


「名前とかってあるの?」


「はい、断絶の大戦というお話です。」


 あ〜確か教材にもあったなぁ……


「探してみる?」


「はい!探してみましょう!」


 断絶の大戦……確か2人の王と1人の英雄の話だったか?


「ありました!これです!」


 ――――――――――――


ここまでだ……英雄よ


「もう諦めろ……」


「ダメだ!今ここで諦めてしまったら、今まで死んできた同胞はどうなる!」


 もう無理だ……我らが神に勝とうなど……最初から到底知っていたはずだ……


「だが……こんな事をしてまでする必要はないだろ」


 そうだ、ここまでする必要はないはずだ。全ては虚しいのだから……


 「何が虚しいだ!お前は悲しくないのかよ!」


 生命は一つ一つに物語はある。だが全てがハッピーエンドとはいかない。


「もうじき全てが終わる……」



「……よし!これで!」


 地面に魔法陣が浮かび上がる。


「久しぶりだな……」


「あぁそうだな」


「たしかにな」


 再び3人が集まった……行けるかもしれない。と少しでも思ってしまったことを、一生後悔するだろう。


「そして……じゃぁな」


「ガァッ!?……英雄何をした……?」


「お前らはいらねぇんだよ、神のなり損ないがよ……」


「英雄……てめぇ、裏切ったな?」


「裏切ったぁ?言い方が悪いなぁ?利用したと言ってくれないか?」


 闇の王と血に濡れし王、そして残酷な神に選ばれし人……


「目的は、私達の魔力暴走か?」


「あぁそうだ……これで世界を俺のものにする……あぁ神よ!この醜き世界に大いなる慈悲を!」


 そう、全てがハッピーエンドとは限らない。

 

vanitas vanitatum et omnia vanitas……

 

 ――――――――――――――――――


 今の記憶は?

 2人の王、1人の英雄……英雄は2人を裏切った……のか?


「聞いてますか?リムちゃん?」


「ん?あぁごめんごめん。あれ?この話の結末ってどうなったけ?」


「はい!結末は裏切った2人の王を英雄が、聖剣で倒して終わってます。」


 どうして、裏切ったんだ?いや恐らく、歴史の改変か。でもどうしてそんな事を。少しだけだがこの世界の闇の断片を見た気がするな……


「今日は、もう帰ろっか?」


「はい!そうですね、もう遅いですからね」


 これから忙しくなるな……

 全ては虚しいか、そうかもしれないな……


 ――――――――――――――


「ふぅ〜疲れたな……」


 図書館で見た記憶。いや記憶なのかも分からないな。だが、今日1つ解ったことは人とは絶大的な力を手に入れれば、堕ちると言うことだ。

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