駆け落ちの予兆
「あ...ああ」
頭に響く痛みで意識が徐々に戻ってくる。
今自分が寝転んでいるのがベッドの上だというのは分かるが、この感触からして、どうやら昨日は自室で眠れたわけじゃなかったらしい。
もしかしてまたラブホに!?
今度は一人でメス堕ちするために無意識に戻ってきたのか!?
「こ、ここは...?」
頭を手でさすりながら視界を開き、今まで自分がどこで気を失っていたかを確認する。
一応ホテルの一室のような部屋だが...少なくともこの殺風景さからしてみてラブホではないな。
ってかこの感じ、確か...
「俺の部屋?」
構造的には俺の部屋に近い。
ただ、俺の部屋ってこんなに殺風景だったっけ?。
「ん?このトロフィー...あ」
壁に飾られるている大量のトロフィーを見て、以前にもこの部屋を訪れたことを思い出す。
そう、あれはたしか凛華が俺の首を絞めて警察沙汰になって、その日からすっかり引きこもり状態になりテスト前日に俺が様子を確認しに凛華の部屋に行ったときだ。
ということは
「...凛華の部屋で長い間気を失っていたということか」
もちろん俺をここに連れ込んだのは凛華で間違いないだろう。
...って、そうだった。
確か昨日桐乃さんと別れて家について、すぐに寝ようと思って二階まで移動したら自室のドアの前に凛華が立っていたんだった。
そしてそのまま...
「ん?なんやこれ!?」
と、ベットから体を起こしたことで、手には手錠がつけられていて、足は縄で結ばれている。
俺完全に誘拐されているやん!
クール系剣道女子に誘拐されているやん!
この部屋に監禁されているやん!
凛華×監禁、か...
これまた全然予想してなかったパターンきましたな//
まぁこういうのは大体ベッドから降りようとしても足に縄がガチガチに結ばれているわけだから転ぶに決まってる。
だったら凛華が来るまでベッドの上で大人しく横になってよう。
あ、それとも少し抗った跡をつけておいた方がいいかもしれん。
ほら、ヤンデレ彼女が帰ってきて、ペットに付けられている首輪がボロボロだったら豹変するだろ?
凛華がそれだけで豹変するかと言われれば微妙だが、一応やっておいた方がいいかも//
だが、そのまえに部屋のドアが開かれた。
「目が覚めたみたいだな」
部屋に入ってきた凛華は、体を起こしている俺に一直線に視線を向ける。
声のトーン的に怒っているというわけでもないし、いつも通りの厳しい表情をしている。
ただ、気になるのはなんで剣道着を着てるんですかね...?
「お、おはよう凛華、さ、さっそくなんだけどこの手錠と足の縄を外してくれない?」
まずは監禁主である女子に投げかける定番の言葉を口にする。
まぁ答えはもう分かり切ってはいるが。
「その願いを私が聞き入れないことぐらい、分からないお前ではなかろう?」
ちょっと言い方がかっこいいの俺的にポイント高い。
「昨日のことは覚えているか?」
昨日と言えば凛華が部屋の前まで来た俺をふいに殴ってきことしか記憶にない。
「いててて...」
俺は凛華にも伝わるようわざとらしく頭を押さえる。
「すまない、ただお前を気絶させるだけだったのに、予想以上に力を入れてしまった」
"ただお前を気絶させるだけだった"という言葉がそもそも常人が声に出す言葉ではない。
それと、本当はもっと力を入れなくても俺を気絶させることができるという点において、改めて凛華のバカげた力を思い知る。
「どれ、少し見せてみろ」
俺に地下好き、頭を掴んで自分の方へと引き寄せる凛華。
//
頭を掴まれるってこんなにも気持ちよかったっけ?
「大丈夫だ、出血はしてない。あと数時間もすれば自然と痛みは消えるだろう」
数時間ってだいぶ長いな...
あ、そういえば
「凛華、今って何時?」
この部屋の窓は完全にカーテンで覆われていて、何故か時計も取り外されているため時間が確認できない。
「なぜ時間が気になる?」
「え?」
「だから、なぜ時間が気になる?今は私とお前二人だけの空間であろう?そこに時間なんていう概念は必要あるのか?」
もしかしてまだそのちょっと難しい単語を使う言い回しにはまってる?
でも、確かに今日はどのみち休みなんだから時間を気にする必要なんて全くないな。
「わたしがお前の手足の自由を奪って、この部屋に連れ込んだ理由、分かるか?」
ちょっと連れ込って//
ラブホじゃないんだから
「昨日の体育祭の途中、私はお前に話があるから今日は寄り道せずに家に帰ってこいと言ったな」
...言ってましたね。
「それにも関わらずお前が帰ってきたのは深夜二時過ぎ。それまでお前がどこで何していたのかについて私は興味がある。今日はその話をしようと思ってお前のことを拘束させてもらった」
えーっと、これってもしかして俺と桐乃さんが二人がラブホに行ったことバレてる?
だって、もし何も知らなくてただ俺が深夜二時過ぎに帰ってきたという事実だけが凛華の中にあるのならここまでする必要はないだろう。
もしバレていたとしたら...結構俺と凛華の駆け落ち展開が有力になるな。
まぁそれはそれで...//
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