いろいろと強化された桐乃さん
お昼に学校が終わり、桐乃さんと一緒に帰宅する。
一応放課後練習は我がクラスも行うことになったが、お情けとして今日はしないことになった。
「一二年生はほとんどのクラスが練習してるね」
桐乃さんの言う通り、グラウンドには、一二年生のほとんどのクラスがいろいろな種目を練習している。
この高校はグラウンドだけは無駄に大きいため、たとえこの中に三年生のクラスが入ったとしても余裕でスペースはある。
てか去年と一昨年こんな残って練習していたか?
「ん?あれは...」
グラウンドの端らへんにまたことのある顔を多数見つける。
確か、この前の合同授業で見た顔だ。
ということは一年A組。
そしてそのクラスの中には
「ほら、清人君、もう行こ」
と、俺が目で凛華のことを探しているのに気づいたのか、桐乃さんが強引に俺の腕を掴んで歩き出す。
...ちょっと力強くなった?
なんだか桐乃さんの握力が格段と上がったと手から伝わる力で感じた。
もしかしてこの夏休み、しばらく会わなかった期間中に塾に通っていたとか?
...塾でトレーニングしている桐乃さん...
もしかして、俺を襲うための準備とかか?...//
だとしたら俺ももっと誘った方がいいのかな?
「...清人じゃないか」
桐乃さんに腕を掴まれて歩き出した瞬間、真後ろからあのクールボイスが聞こえてきた。
後ろを振り返ると、なぜかAクラスの練習場所とずいぶん離れているのにも関わらず、凛華が立っていた。
「や、やぁ凛華...!?」
え、ちょっと桐乃さん?なんで少し握る力強くしたの!?
「ん?どうした?どこか痛いのか?」
「い、いや、そういうわけじゃ」
また下手なこと言うと握る力を強めてきそうだな。
...まぁ、それでもいいか。
「凛華、どうしてここに...ギッ!」
痛い!シンプルに痛い!
骨が圧迫されている感覚がする。
でもいいです桐乃さん!
どんどん力強めていっちゃて下さい...!
僕は痛みによるマーキングも拒みません!
むしろ大歓迎です!
「本当に大丈夫か?ずいぶんと痛みに耐えている顔をしているが...ん?」
心配そうに俺に駆け寄った凛華が、俺の後ろに目を向ける。
「...貴様、なぜここにいる?」
桐乃さんの存在を確認すると、すぐに臨戦態勢に入る。
「またきみかぁ~。いい加減しつこいよ」
桐乃さんは心底鬱陶しそうに凛華の方を振り向く。
「どうやらまだこりていないようだな。清人にあんな大けがを負わせておきながら二度も私の前に現れるとはな。しかも今回は清人と二人で帰ろうとしているとは...外道め」
「前にも言ったけど、もうあのときのことはとっくに清算しているし、元からきみには関係ないことだよね?ならもういいかな、わたしたち、これから帰るところなんだし」
「...このままただで帰れるとでも?夏祭りのときは姉様がいたから私は自身を制御できたが、今回はその自信はないぞ」
「なら好きにしたら。たかが剣道が人より優れているだけの小娘がわたしに勝てるとは思えないけどね」
おーい、ここ学校の中ですよ?
ここで殺し合いなんかしたら停学、または退学になりますよ。
「言っておくけどもしわたしに襲い掛かってきたら正当防衛として容赦なく徹底的にそのクソみたいなプライドバキバキにへし折るからね」
「ありもしない未来を語るのは自由だが、その分後で恥をかくのは貴様だぞ」
今のセリフをもし誰かに聞かれたらどうする?
多分明日には学校中であの桐乃さんが"クソ"なんていう言葉を使ったってスクープになっているぞ。
あとこんな状況でも次々に師匠っぽいセリフが出てくる凛華、マジかっけぇー。
俺のアソコが濡れちまう。
これが本当の”濡髪"なんつって。
「おーい、凛華ちゃん?こんなところで何しているの?みんな待ってるよ」
凛華が一歩を踏み出しそうになったとき、横からそんな声が入った。
「...すまない、そうだったな。休憩を長くとりすぎた。今向かう」
どうやら、話しかけてきたのは凛華のクラスメイトの女子みたいだ。
なんか凛華って陰キャではないけど周りから恐れられていて孤立しているイメージがあったけど、今の会話からして意外とフレンドリーなのか...?
..もう完全に歩歌の上位互換やん。
「そうだ。清人、お前のクラスは今日練習がないのだろう?なら、一緒に練習しないか?スポーツセンターの代わりに」
確か、前に凛華が俺がいつ襲われてもいいように体を鍛えさせるとか言っていたな。
これもその一環なら喜んで
「そこまでいうならぜっ!?」
と、そんなこと当然俺の後ろにいる桐乃さんが許すわけもなく、俺が了承する前に俺の背骨に指を食い込み、喋ることを強制中断させる。
「っっっっっ!や、やっぱりい、いいや」
「...そうか」
俺に断られたことで、凛華がまたもや不機嫌になるが、今はそんなこと気にしている場合じゃない。
桐乃さんが無言で、今度は俺の首を後ろから掴み歩いていく。
「......っ」
別れ際に、本当は凛華にまた家でと言いたかったが、首を掴まれているのだから思うように声が出ない。
「......」
そんな俺を怪訝そうに見つめていたが、最後まで凛華は俺が今何をされているのか気づくことはなかった。
まさかあの凛華に気づかれることなく俺に物理的な脅迫を加えられるとは。
桐乃さん、だいぶステルスプレイが上手になったな。
っていうかとうとう意図して俺にまで危害を加えるようになった。
...やっぱりこれでこそDV彼女だよな//
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