見知らぬ女
「き、桐乃さん」
「ん?どうしたの清人君?」
「その...昨日はごめん。勝手にゲーム辞めちゃって」
駅で桐乃さんと合流した俺は、まず昨日のことへの謝罪を述べる。
「いいよいいよ。多分あの風珠葉ちゃんにゲームコードを抜かれたりしたんでしょ」
やっぱり桐乃さんにはお見通し。
「大丈夫、清人君"には"全然怒ってないから。もとはと言えばあんな夜遅くにゲームしようって誘ったわたしが悪いんだから」
さすがは仏の桐乃さん!
勝手にゲームを中断されてもまったく気にしてないとは!
「そういえば桐乃さん、今日はどこに行くの」
「わたしが行こうとしていたのは。条棟駅かな!」
条棟駅と言えば、この条棟市の中心街。
娯楽施設や図書館なども充実していることから、学生街とも言われている。
「条棟駅にある大きな図書館で一緒に勉強でもしない?」
「もちろんします!」
そうと決まれば、二人で改札口を通り、ホームまで向かう。
もちろん手をつなぎがら。
条棟駅はここから一駅で着く。
...さっそくじろじろと見られてるな。
俺たち二人ホームの中央に立っているため、人の目に着きやすくなる。
加えて桐乃さんが周囲を魅了するほどの容姿をしているため、通りすがりにちらちら見られるのも仕方ない。
そして当然手をつなぎながら立っている俺も注目の的になる。
いや~この妬みの視線がこれまた気持ちいですな~。
そう優越感に浸っていると、条棟駅方面に向かう電車が到着した。
休日ということもあり中は空いている。
二人で席に座る。
もちろん手をつなぎながら。
電車でもじろじろと見られる。
ほら、もっと妬みの視線を俺にぶつけろ!
ぶつけるほど俺の昼飯が上手くなる!
それからたっぷりと栄養をもらっていると、あっという間に条棟駅に到着した。
「まずは昼食をとろうか」
時刻は十二時過ぎ。
条棟駅周辺には、飲食店が選んでられないほどあるが、一番食事をしやすいのはこのフードコート。
「開いてる席は...あ、あった!」
フードコートは大体学校の学食の三倍近くあるが、大体の席は埋まっている。
ただ今日は奇跡的に開いているテーブルが見つかったそうだ。
「ちょっと込み過ぎだよね」
かといって、その人テーブル以外は全て埋まっていて、なんなら立ち食いしているものまでいる。
「清人君は何食べる?」
「とりあえずあそこの生姜焼きかな」
混雑しているため、少し大きめな音量で話さないと、こんな近距離であっても聞こえにくい。
「わたしはあそこのステーキ弁当かな。じゃあ先に清人君行っていいよ」
さすがに二人一緒に並んだら、荷物が盗まれる可能性がある。
「うわー...これまた凄い行列だな」
店舗の前には、二十人ほどの列ができている。
「これ何分かかんだよ」
俺はM気質ではあるが、焦らしプレイや放置プレイはあまり好きではない。
「...ん?なんだあれ...?」
何となく辺りを見渡していたら、ふとサングラスをかけた女性...いや、背丈的に女子と目があった。
その女子はどこか空いているテーブルを探しているというわけでもなく、俺のことを見つめている。
「...普通に怖いんですけど」
これあれか?目を放したらどんどん近づいてくる的な。
なるべくその女子の方を見ないために、スマホをいじっていたら意外と早く俺の番が来た。
「では、これが鳴ったらまたお越しください」
注文をし、フードコートに必ずある呼び出しベルを受け取り、桐乃さんが待っている席に向かう。
「じゃあ今度はわたしが並んでくるね」
「はい、行ってらっしゃい」
桐乃さんが行ってしまったため、俺はまた一人虚しくスマホをいじる。
そういえばよくスタバとかで陰キャが一人でスマホをいじったり勉強したりしてたら陽キャ達に盗撮されて馬鹿にされるって聞いたんだけどあれってホンマなん?
もしホンマだったら最近の陽キャどもモラルなさすぎだろ。
まぁでも、俺と桐乃さんが一緒にいるところを盗撮されるのは大歓迎だが。
「そういえば桐乃さんの並んでいる店舗はどれぐらいの行列なんだ?」
目で桐乃さんの姿を探していると、またさっきのグラサンをかけた女子と目が合う。
「だから怖いって」
しかもなんかさっきよりも俺との距離縮まってきてない?
一瞬目を放してからもう一回女子の方を見る。
やっぱり近づいてきてるな...
え?俺になんか用がある桐乃さんと妹たち以外の女子なんていたの?
それともこれあれか?ヤンデレストーカーか?
ほら、なんかハンカチを拾われたとか言って一目惚れしてそこからストーカーになる王道シチュエーション。
で、どこから仕入れたか分からないスタンガンを当てられて、目が覚めたら女の家で、手足が縛られていて首輪をつけられたりするんだよな。
「首輪...俺が女の子に首輪をつけられる...」
...今度桐乃さんにお願いしようかな//
てそんなこと妄想してる場合じゃない!!
今この間にも女との距離が近づいて...
「ねぇ」
...いつの間にかもう目の前にいました。
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