Hell keeper ~警視庁 天晴組~

空山羊

第1話 パパが死んだ日~前編~

2043年11月。


長い長い残暑が終わり、秋という言葉が虚しくなってしまうような、そんな冬の様な寒さが訪れた日にパパが亡くなった。


柳生やぎゅう 晴喜はるき 享年60歳


パパは昔から言っていた。


「パパは60歳になったら死んじゃうけど、澪華みかは悲しんじゃいけないよ。ママたちをよろしく頼むね。」


なんで、パパはそんなことを言っていたんだろう?

なにかあったのだろうか?


「・・・」「・・・ん!」「・・・さん!」「みかさん!!」「澪華さん!!!」


ハッと目を開けるとそこは江央区藪中橋やぶなかばしという橋の下にある現場であった。


「みかさん大丈夫ですか?今日くらいお休みになられた方がいいじゃないですか?」


そう言って心配そうに声を掛けてくるのは、私のバディの南川大吾みなみかわだいごだ。


今、私たちは殺人現場にいる。


なんで殺人現場にいるかというと私は刑事だからだ。


警視庁 刑事部 捜査第一課 雨過天晴うかてんせい組織 通称 天晴組あっぱれぐみ 柳生澪華やぎゅうみか 29歳。 


私は小さいころからの夢であった刑事になった。


これもある意味パパの影響だったのかもしれない。


また、パパのことを考えてしまった。

今は事件に集中だ。


「南川。状況。」


「はい。被害者は玉田幸作たまだこうさく65歳。死亡推定時刻は本日8日、午前4時30分。新田区池宿でBarやホストクラブなど6軒ほど経営しています。死因は頭部への強い衝撃かと思われます。」


「トラブルや目撃情報は?」


「トラブルはそれなりにあったようです。ここ最近ですとホストクラブの女性客と金銭トラブルがあったようです。目撃情報は特にありません。」


「第一発見者は?」


「第一発見者は齊藤肇さいとうはじめさん57歳です。発見時刻は本日8日、午前5時45分。毎日の日課になっている犬の散歩をしていて、この橋の下を通った時に見つけたそうです。」


「被害者と目撃者の接点は?」


「いえ。特にないそうです。それに齊藤さんはあの有名企業が多くある中京区豊銀にある一流企業の部長さんらしくって玉田と接点を持つような感じじゃないですね。それに金銭トラブルとかも特にないようですし。」


「そうか、、、」

そう言って目を閉じる。


するとパパが昔私に言っていた事がよみがえってくる。


「いいか澪華みか。どんな物事でも決めつけるな。特に誰かに言われたことだけで決めつけることが一番よくない。おかしいと思った時は一歩引いて俯瞰して物事を見るんだ。点だけで見ちゃいけない。点を線にするんだ。そして、自分で動いて、見て、確認するんだ。いいかい、最後に決定するのはいつでも自分なんだ。それだけは覚えておくんだぞ。わかったね。」


目を開ける。

やることは決まった。


「南川。齊藤さんをもう一度洗え。それと、発見時に靴などに玉田さんの血液が付着しているおそれがある。そちらも調べたいので協力してもらって鑑識に出すように。あと、にも血液が付着している可能性がある。そちらも調べるように。それとホストクラブに行って金銭トラブルの情報を徹底的に引っ張ってこい。従業員についても洗いなおせ。それと玉田が風俗店を経営していないかも含めて調べろ。」


「はい。わかりました。」

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