みんなの別れた理由

読み切り

本日の女子会のお題だよ。

『元彼と別れた理由！』

私含めみんなネタには困らないからね。

みんなこぞって、

「男運がない！」

って大手振って言ってるようなものだけどね、ないものはないからね！

実際。

そう、ないものはない。

だからこうやって飲み会のネタとして昇華させるくらいしかないんだ。

Ａちゃん

「デート中にね、交通事故を目撃しちゃったの。

信号無視した自転車と車がぶつかって、自転車の人が跳ね飛ばされてこっちに吹っ飛んで来たの。

目の前にドーンッて落ちてきた男の人は、明らかに足とか変な方に曲がってたんだけど、私はそれを見て、

『あわわ……どうしよう、どうしよう！』

ってパニックになっちゃって。

周りに人もいなくて、私たちが通報しなきゃなのに動けなくて。

そしたらね、隣の彼氏がパッとスマホ取り出したの。

それで、

『あぁ、救急車呼んでくれるんだ』

と思ってホッとしたらね、違ったの。

彼氏、スマホで倒れた人を撮り始めたのよ、ニヤニヤしながら車と交互に。

多分、ネットにでも上げる気だったんだろうね。

それ見て凄い冷静になって、隣で警察に通報しつつ、その場で彼氏との別れを決めたわ。先週の話」

Ｂちゃん

「同じ仕事場のね、童顔でくしゃっとした笑顔が人気の男の先輩が盗撮で逮捕されたんだよ。

駅の本屋で女子高生のスカートの中をスマホで撮ってたって。

エスカレーターでもやってた常習犯だったって。

私も含め、

『○○君が！？』

って仕事場の人もびっくりしたし、信じられなかった。

その日の夜に彼氏と食事して、彼氏にそれを話したらね、酔ってたからだと思うんだけど、

『ははっ！もっと上手くやればいいのに、下手打ったな、そいつ』

って。

そう、出てきた感想が、犯罪者寄りなのよ。

考え過ぎかもだけど、一事が万事で、他にも気になってたことあったけど、結局はそれがきっかけで別れちゃった」

Ｃちゃん

「私はね、ちょっと結婚の話もちらほら出てきてた頃かな。

別に年収低いわけじゃないのに、都内だけど車も持ってないのに、実は数百万ローンあるって言われたのよ。

何のローンかと問いただしたら、まずエウリアンに引っ掛かってて。

え？エウリアン知らない？

繁華街で若い女の子がね、カモになりそうな冴えない男に声を掛けるの。

それで絵の展示場に引きずり込んでは、何の価値もないプリント印刷した絵画を数十倍、数百倍？の値段で売り付ける詐欺よ。

女の子の口車に馬鹿な男達はまんまと騙されて、高額ローン組まされるの。

まずそのローンね。

次は宝石電話商法、こっちは、そう、電話でまた若い女の子が言葉巧みに店までおびき寄せて、ただのクズダイヤ、ううん、ダイヤかどうかすら怪しい適当な石をね、これまた数十倍の値段で売り付けるのよ。

それにまんまとおびきだされて買ったローン。

更に、有名な彫刻のミニサイズレプリカ、これも以下同文、それら全部に引っ掛かってたの。

聞いてないだけでまだあったかも。

それで、マンションや車ならともかく、詐欺ローンに足を引っ張られての結婚生活、この先も引っ掛かりそうな頭の悪さが嫌になったの。

それでもね、まだ情もあった。

残り１％の情が消えた決定打は、漫画雑誌の裏の広告によく載ってるインチキ開運グッズ。

『死神も真っ青！』

みたいなあれよ。

札束風呂に入ってるやつ。

あれのブレスレット持ってたの！！

え？それくらいなら？

確かに、それが金額にしたら一番ちっちゃいけど、あれを買っちゃう人間性にね、私のなけなしの情けの全てを持っていかれたのよ。

……多分、彼は今もまた何か新しい詐欺に引っ掛かってると思う」

Ｄちゃん

「私は今日一番の下らなさで優勝狙うわ。

この間、初めて私の部屋でお部屋デートしたんだけど。

とにっかく、トイレットペーパーを使いすぎなの。

トイレから、

カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ……！

カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ……！

『トイレでハムスターに回し車でも使わせてんの！？』

『体に巻いてんの！？時期外れもいいとこ、一人ハロウィンでもすんの、今桜満開の春だけど！？』

『何！？サプライズでタイヤマンにでもなる気なの！？』

ってね、もうツッコミ追い付かない位カラッカラッの無限地獄。

アパートだしトイレ詰まったらってもう気が気じゃなくて、二度目のトイレに入られる前に外デートに切り替えて、そのまま終わりにした。

トレペが理由なことを話したのか？

ううん、顔が無理って言った」

Ｅちゃん

「性格とかは問題なかったんだけどね。

私もお金というか、うん、Ｃちゃんとはカテゴリ違いのローンが理由かな。

ちょっと将来の話とかする時に、

『家を買うのは子供ができてからがいいよね、部屋数とか大事だし』

って私に対して、彼は、

『いや、家は貯金と退職金で一括で買おうよ、リフォーム代とか考えたらそっちの方が賢いよ』

だったの。

その時は、そういう考えもあるのね、くらいだったけど、普段からレストランとかの支払いも、

『俺は現金派だからクレジットカードは持たないんだ』

とか、

『車も都内だからレンタカーやタクシーの方がコスパいい』

って言い張ってるの。

でもさ、結婚して子供生んだらそんなコスパがなんて言ってられなくない？

家の話もそう、クレジットカードを作らないのも、車も。

実はこの人、そもそもただ、

『ローンもカードもただ審査が通らないんだけなんじゃないの？』

って思ったのよ。

そしたら、思い当たる節がどんどん出てきて、実際そんな気がして、確かめずに別れちゃった。

うん、解るでしょ、女のこういう勘って高確率で当たるのよ」

Ｆちゃん

「私は過去のやらかし系かな。

デジタルタトゥーとか黒歴史じゃなくてね。

付き合い始めたその人、前は喫煙者だったのよ。私と付き合う時はもうやめてたんだけどさ。

でも、そのやめた理由がね、

「煙草で家を一軒丸々燃やしちゃって。

一度目は自分の部屋のボヤで済んだんだけど、二度目はね、気付くの遅くて全焼。

激怒した親に追い出されて、新しく住んでだアパートでもまたやっちゃって、アパートが全焼。

いやぁ、木造だからよく燃えたよ。

そしたらさ、親から、

『どんな形のものだろうが、煙草をやめないと縁切るぞ！』

って激怒されて、何とかやめたんだけどね。

本当は今でも吸いたいんだよねぇ』

ってね、悪びれもせずに笑ってたのよ。

『へ、へぇー』

ってさ、私、コメントに困って愛想笑いして流そうとしたの。

でもその私の愛想笑いをどう取ったのか、

『いやぁ、実はちっちゃいのはまだあるんだよ。

旅館やホテルでさ、寝煙草はご遠慮下さいって注意札あるだろ？

あれ、眠らなければオーケーなんだろって解釈して、布団で吸ってたら灰が落ちて布団燃えちゃって。

布団だけですんだけど、それからその宿出禁になっちゃったよ、いい宿だったんだけどね、それから禁煙になってた』

って、笑いながら両手を広げておちゃらけられてね、私、気付いたら全力でそいつの事全力でビンタしてた。

オープンカフェで賑わってたから注目浴びたわ。

そう、そいつには言ってなかったけど、うちの両親、小さい旅館営んでいるのよ、もうね、全く笑えなかった」

Ｇちゃん

「別れた理由、最後の私が一番平凡で申し訳ないわ。

ただ普通に、他の女にしかも数人にちょっかい掛けてるのを知ったのよ。

それですぐに別れ切り出したんだけどね、メッセージツールでグダグダ別れ話している真っ最中。

そいつがね、以前一緒に買って、彼の部屋に置ていたぬいぐるみに包丁を突き立てた写真を、そのメッセージツールのアイコンにしてたの。

「はぁーっ！？病みアピールキモいわぁ！メンヘラ女子なの？」

別れ際に見せる男の新たな一面って大抵クズじゃない。

そいつも例に漏れずだったんだけど。

でもね、そのすぐ後に、どうやらちょっかい掛けてた職場の女にね、包丁で刺されて警察騒ぎになって聞いて、

『あいつ、自分の未来を予言してたんか！？』

ってね、ちょっと見直したわ」

よし、ネタも尽きないし二次会で二巡目行こうか