花咲きの病の少女・天泣朝顔
FreeCell
第1話
「かえるさん、かえるさん。あなたは私のことが怖くないのかしら?」
少女は手に乗ってきたかえるにそっと話しかけた
するとかえるの手元からどんどん朝顔の花が咲き乱れ、手から溢れ返り、少女を守るように広がっていった
「みんなは、私から生まれるこの朝顔を恐れているのに。あなたは変わり者なのね」
少女の右目は朝顔に隠れ、いや、そこから生えているようにも見えた
「いつか私も、花咲きの病から解き放たれて、“普通”の生活ができるのかしら」
ケロケロと鳴くかえるに、少女は微笑みをこぼす
少女は生まれはただの普通の少女だった
普通の両親
普通の家庭
普通の日常を過ごしていた
だがそんなある日、少女は『朝顔』に魅入られた
『朝顔』に魅入られた少女は、その日を境に右目が失明したとともに花が咲き、少女の感情を元に『朝顔』が咲き乱れるようになった
病院に行こうが、お祓いに行こうが、魅入られてしまった少女は『朝顔』から解放されることはなくなった
それからと言うもの、彼女の体から咲き乱れる『朝顔』を誰しもが恐れ、ついには最愛の両親にまで恐れられてしまった
それ以来、朝顔は両親が用意した人里離れた山奥に閉じこもってしまった
枯れることなく咲き、増え続ける『朝顔』の森の中、今日も雨の中傘もささず外で空を上げていた
「けーろけろ、けーろけろ。あなたはいつまでなく子なの。けーろけろ、けーろけろ。私と一緒に踊りましょ……あっ」
かえるは楽しそうな朝顔に目もくれず、近くにいた仲間の元へとんで行ってしまった
悲しそうにそれを見つめる朝顔
「私も、いつか、自由になれるのかしら…」
ポツポツと降り続ける雨空を見上げ、はぁっとため息をついた時だった
リーーン
音がした
それは外から人が来たと言う合図
家を囲むように設置された柵には朝顔が絡みつき、唯一の出入り口には朝顔柄の風鈴が置いてある
これがなる時はいつも食料などの必需品を届けに来てくれた時だけ
それ以外には、何も、ない
両親でさえ、来てくれない
「結局…お父さんとお母さんではないもの…」
リーーーーーーン
もう一度、音が鳴った
だが普段はならないはず
それだけせっかちな配達人なのだろうか
朝顔はブランコから腰を上げ、一応雨傘をさし、玄関の方に向かっていく
歩く道以外には『朝顔』が咲き乱れた庭
どこを見ても、あるのは『朝顔』だけだった
「ごめんなさい。お待たせしました…」
そこにいたのは朝顔は知らない人物だった
例え知らない人物でも、配達人ならその会社の服装をしているわけで、別に驚いたりはしない
だが、今目の前にいる人物はどうみても今まで面識のない人物だった
ゆっくりと、透明な傘の下にいる男性か女性か分からない人物を、少し距離を置きつつ、観察した
藍色の髪を三つ編みにし、ところどころに黄色い花を交えている
そのほかにもいろいろな花が髪に混じっていた
ひまわりの様な黄色い瞳には純白の花が咲いている
そんな瞳が朝顔を見つめ、ニコッと笑い、柔らかい声をだす
「始めまして。君が、朝顔さん、ですね?」
ニコッと笑う優しい笑顔
朝顔はそれに驚き、傘の影に隠れながら、恐る恐る答えた
「はい…あの、あなたは…?配達員さん、じゃないですよね…?」
「えぇ。私はハナバサミカエイといいます。配達員さんではなく、花屋さんですよ。ここから遠く離れた場所で花を売っています」
「…?なんで、花屋さんがこんなところに…?」
ハナバサミ、と名乗った人物はニコッとまた笑って、腰にぶら下がっている鞄から名刺入れを出し、差し出してきた
それを恐る恐る受け取り、また離れて、傘の影の中、確認した
華鋏
「華鋏…花影…さん…」
「はい。花屋さんの華鋏花影です。ですが、今日は花屋としてではなく…裏をご覧下さい」
そう言われて、ちらっと表情を見てから、裏を見た
「摘花、師…?」
それは、何?
そう聞く前に華鋏は言った
「朝顔さん。私は、あなたのお父様とお母様に依頼されて来たんですよ」
「…え?」
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