第5話 星の巫女
「え~とね、まず星の巫女っていうのはだね、星と対話するチカラを持った者のことなんだよね」
あっさりとした感じでアミィは星の巫女の説明を始める。
「星とお話できる?でもアミィ、私は今まで1度もそんなこと無かったわよ。それにあれは夢かもしれない」
「でも毎晩夢に見ていたんでしょ?それはキミの対話するチカラが未熟だったからさ」
アミィは私の反論を即座に切り捨てる。どうやら私が星の巫女である方が彼女にとって都合が良いらしい。
「ルナ、じゃあ君はもう星と話すことができるのかい?」
サンもそれを受け入れたように私に質問する。
「いいえ、そんなことはないと思うのだけど……」
「そりゃあそうさ。簡単に話せるわけじゃない。キミはじゃあ、別の森にいるお友だちに声を届けられるかい?」
「距離的な問題なの?」
「それもあるってことさ。その距離の問題だったりだとか、波長が合わなきゃならなかったりだとか、色々な理由があるってわけ」
「じゃあ一体どうすればいいの?夢を見なきゃダメってことよね?」
「ううん、そうじゃない。星の波長の強い場所に行けばいいのさ」
アミィは当然かのようにそう言う。
「そう……でも私別にそんなこと言われても話せるからどうなのって感じなんだけど……」
「星たちならきっとキミのお母さんの行方を知っているよ」
私が乗り気でない言葉を吐いたからか、アミィはお母さんのことを引き合いに出してきた。
「でもそんなよくわかんない場所に行くくらいなら普通にお母さんを探した方が……。まだそんなに遠くにも行ってないんじゃないかな……」
「う~ん……でもね、言い難いんだけど多分キミがお母さんと会えるのはその場所なんだよね……」
「それってつまり……ルナのお母さんは死んでしまったってこと?!」
サンが素っ頓狂な声を上げる。
「いや、そうじゃないんだよ。さっきも言った通りにキミのお母さんは、上にいるって言ったよね?」
飛躍した反応を見せたサンにやや冷笑しつつアミィは繰り返し持論を展開する。
「そうね」
「星と波長の合いやすい場所っていうのが、上の方にあるんだ」
「じゃあ、そこにいるのね。お母さんは」
「おそらくね」
「はぁ……先の長くなりそうな話ね……その場所ってのがまずわかんないし……」
それ以外に方法がないのならば私はそこを探して目指すしかないという事実に嘆息する。
「そうだねぇ……でもキミはボクが探していた星の巫女なんだ。もちろんボクも同行するよ」
アミィはどうやら私たちと同行してくれるらしい。何かを知っているというのならば話は早い。
「アミィが案内してくれるのなら心強いけど……で、その場所ってのはどこなの?」
「そこはね、星の降る丘って呼ばれているよ」
「え……それって……」
アミィの口からは極めて最近聞いたばかりの言葉が放たれた。
「んふふ……ビンゴ!やっぱりキミは星の巫女なんだね。心当たりがあったんでしょう?」
そんな私の反応を見て確信したようにアミィが指を指す。
「昨日の夜、お母さんが言っていた……星の降る丘のことを覚えているか……って。でもあんまりいいことじゃないとも言ったわ」
「……キミのお母さんは知ってるみたいね。キミが星の巫女だってこと」
それを聞いたアミィは一瞬表情を曇らせた。
「星の巫女は、良くないことなの?」
もちろんそんな不安を抱えたままではいたくない。私はアミィにそのことを問い詰める。
「……特別なんだよ、キミは。特別だからこそ、果たさなきゃならない義務がある」
また抽象的な言葉で煙に巻こうとする。しかしそれが孕んでいるものはなんだかとても壮大で悲劇的なものなんじゃないかと思えた。
何も知らないでこの旅の決定を済ませていいようなものではない、そんな気がした。
「なによ義務って……私が星の巫女だなんて初めて知ったのに……そんなのおかしいじゃない……」
私がすべきこと。しなければいけないこと。そんなこと、いきなり言われてもわかるはずもない。
「そう。ボクだってそうだ。アミィ・ユノンに生まれたんだ。でもキミはいい方だよ?言うならば、生まれながらの勇者みたいな!ボクはその勇者を探す占い師。キミはそんな地味な役回りじゃあないんだからさ」
また何かよくわからないことを言い始めたアミィ。
でも星の降る丘に、全ての答えはあるに違いない。
「わかったわ。わかった、行こう」
仕方がない。了承しなければ何も始まらない。それにまだ、それが私の杞憂である可能性だって十分にあるのだから。
「いいのかい?ルナ」
サンが心配そうに覗き込んでくる。
「サン、あなたも来てくれる?」
私のことなのだから、本来は昨日今日会ったようなサンを巻き込むわけにもいかない。
でもなぜか、なぜか私はサンの瞳を見るとそう言わずにはいられなかった。
「もちろんさ、ルナ。キミがどんな存在でも、僕はついていくよ」
「ありがとう、サン……」
そんな私を肯定するかのように抱擁する。しばらくの温もりが私の不安な心を解きほぐすかのように広がった。
「……もしかしてボクお邪魔かな~?」
それをじっと見ていたアミィはニヤケながら茶化し始めた。
「いやいや!なにを言ってるのよ!」
「むっふっふ~。冗談冗談」
ムキになる私と対照的に緩い微笑を浮かべるアミィ。……この子のこの態度には慣れていかなければいけないらしい。
「……まあいいわ。さっき言った通りあなたにもついてきてもらうわよ。道はわかってるんでしょうね?」
「……え?」
「……え?」
アミィはとぼけたように首を傾げる。
「いや、実はね……星の巫女がその場所を知るって……」
冷や汗を浮かべながら彼女は私を見つめる。
「いや知らないわよ!……もしかして忘れてる記憶を夢で思い出させようとしてたのかしら……」
「きっとそうなんだろうね……」
こうなっては手詰まりか。私の即席の決意はそれに相応しく瞬く間に旅を終わりへと導いたらしい。
「う~んそうだなぁ。よし、じゃあちょっとボクの見せ場だね」
アミィはさっきのようにまた何かを描き始めた。
「むにゃむにゃ……」
そしてまた何かを唱えている。
「う~……あ~……そうなのかぁ……」
何かと話すかのようにアミィは唸っている。
「どうなの?」
「うん……北、だって」
「なんか自信なさそうだけど……」
「方角しかわかんなかったんだ……」
そう言って申し訳なさそうに眉を下げる。
「……十分すごいと思うけどな……」
サンは驚いたように目を丸くしていたが。
「そう言ってくれるなら嬉しいよ!」
「じゃあ、北だね」
「あ、今は、ね」
「ん?どういうこと?」
「曲がり道とかはまた別なんだよねこの方法」
「じゃあどうするのよ……」
「そこはもう目撃情報を集めるしかないね……ごめんね役に立たなくて」
乗り気だった割には段取りがはっきりとしていなかったらしい。しかしそれを叱責しても現状が何もかわるはずもないし、彼女がいなければ1つのヒントもないまま旅を始めなければいけなかったのだ。感謝こそして咎める理由はない。
「……ま、北に進めばとりあえずはいいってわかったし別にあなたが役に立ってないことはないのよ」
「わ~い!」
先程までの沈痛な面持ちがケロッと笑顔に変わる。天真爛漫なことは良いことだがこうもわかりやすいとは……。
「じゃあ今度こそ、行こうね」
お母さんを追って、星の降る丘を目指す。
先行きは……不安だけどね……。
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