第5話 星の巫女
「え~とね。まず星の巫女っていうのはだねぇ、星と対話するチカラを持った者のことなんだよね」
「星とお話できる?でもアミィ、私は今まで1度もそんなこと無かったわよ。それにあれは夢かもしれない」
「でも毎晩夢に見ていたんでしょ?それはキミの対話するチカラが未熟だったからさ」
「ルナ、じゃあ君はもう星と話すことができるのかい?」
「いいえ、そんなことはないと思うのだけど…」
「そりゃあそうさ。簡単に話せるわけじゃない。キミはじゃあ、別の森にいるお友だちに声を届けられるかい?」
「距離的な問題なの?」
「それもあるってことさ。ようするに波長が合わなきゃ」
「じゃあ一体どうすればいいの?夢を見なきゃダメってことよね?」
「ううん、そうじゃない。星の波長の強い場所に行けばいいのさ」
「そう…でも私別にそんなこと言われても話せるからどうなのって感じなんだけど…」
「星たちならきっとキミのお母さんの行方を知っているよ」
「でもそんなよくわかんない場所に行くくらいなら普通にお母さんを探した方が遠くにも行ってないんじゃ…」
「う~ん…でもね、言い難いんだけど……多分キミがお母さんと会えるのはその場所なんだよね…」
「それってつまり……ルナのお母さんは死んでしまったってこと?!」
「いや、そうじゃないんだよ。さっきも言った通りにキミのお母さんは、上にいるって言ったよね?」
「そうね」
「星と波長の合いやすい場所っていうのが、上の方にあるんだ」
「じゃあ、そこにいるのね。お母さんは」
「おそらくね」
「はぁ…先の長くなりそうな話ね…。その場所ってのがまずわかんないし…」
「そうだねぇ…。でもキミはボクが探していた星の巫女なんだ。もちろんボクも同行するよ」
「アミィが案内してくれるのなら心強いけど……で、その場所ってのはどこなの?」
「そこはね、星の煌めく丘って呼ばれているよ」
「え……それって…」
「んふふ…ビンゴ!やっぱりキミは星の巫女なんだね。心当たりがあったんでしょう?」
「昨日の夜、お母さんが言っていた…。星の煌めく丘のことを覚えているか…って。でもあんまりいいことじゃないって」
「…キミのお母さんは知ってるみたいね。キミが星の巫女だってこと」
「星の巫女は、良くないことなの?」
「……特別なんだよ、キミは。特別だからこそ果たさなきゃならない義務がある」
「なによ義務って…私が星の巫女だなんて初めて知ったのに…そんなのおかしいじゃない…」
「そう。ボクだってそうだ。アミィ・ユノンに生まれたんだ。でもキミはいい方だよ?言うならば、生まれながらの勇者みたいな。ボクはその勇者を探す占い師。そんな地味な役回りじゃあないんだからさ」
また何かよくわからないことを言い始めたアミィ。
でも星の煌めく丘に、全ての答えはあるに違いない。
「わかったわ。わかった。行こう」
「いいのかい?ルナ」
「サン、あなたも来てくれる?」
「もちろんさ、ルナ。君がどんな存在でも、僕はついていくよ」
「ありがとう、サン…」
「……もしかしてボクお邪魔かな~?」
「いやいや!なにを言ってるのよ!」
「むっふっふ~。冗談冗談」
「……まあいいわ。もちろんあなたにもついてきてもらうわよ。道はわかってるんでしょうね?」 「…え?」
「……え?」
「いや、実はね…星の巫女がその場所を知るって…」
「いや知らないわよ!……もしかして忘れてる記憶を夢で思い出させようとしてたのかしら…」
「きっとそうなんだろうね…」
「う~んそうだなぁ。よし、じゃあちょっとボクの見せ場だね」
アミィはさっきのようにまた何かを描き始めた。
「むにゃむにゃ…」
何かを唱えている。
「う~…あ~…そうなのかぁ…」
「どうなの?」
「うん…北、だって」
「なんか自信なさそうだけど…」
「方角しかわかんなかったんだ…」
「…十分すごいと思うけどな…」
「そう言ってくれるなら嬉しいよ!」
「じゃあ、北だね」
「あ、今は、ね」
「ん?どういこと?」
「曲がり道とかはまた別なんだよねこの方法」
「じゃあどうするのよ…」
「そこはもう目撃情報を集めるしかないね…。ごめんね役に立たなくて」
「……ま、北に進めばとりあえずはいいってわかったし。別にあなたが役に立ってないことはないのよ」
「わ~い!」
「じゃあ今度こそ、行こうね」
お母さんを追って、星の煌めく丘を目指す。
先行きは…不安だけどね…。
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