人間を滅ぼしてやる!!

脇役筆頭

第1話 転生

「「魔王様!」」


目の前にいるスライムとネズミが声を上げる。黙ってみていたが、他に返事をする奴もそれっぽいのもいない。どうやら俺に話しているようだ。


「俺の事?」


「はい、魔王様!」


夢か?最後の記憶は何だったか。家に居たんだっけ?いや飲み行ったんじゃなかったっけ。今何日だ?朝から打ち合わせあった気がするんだけど…。


「ご命令を!」


俺本当に魔王なのか?普通もっと…魔人っていうの?人型の従者みたいな、黒騎士みたいなのがいるもんじゃない?


「君たちだけ?」


「…勇者の進行により、全滅しましたので。」


「ち、違うんです魔王様!おい、言葉に気を付けろ!」


ネズミが慌ててスライムにかぶさる。これネズミが大きいの?スライムが小さいの?会話できてることを考えるとネズミが大きいのかな?オウムとかも、大きい方が知能高いとかなんとかっていうし。


「全滅?他に人いないの?」


「残ったのは…?失礼しました、人はおります。」


「さすが魔王様、まだ諦めていらっしゃらないのですね!」


あ、人っていうか人材のことを…いや魔王なら他の部下とかっていうべきだったか。ちょっとややこしいな。


「まだ諦めるには早い。試合が終了してしまう。」


「何処までもお供いたします。」


「さすが魔王様、我には意味が理解できません!」


前世のネタでふざけても寒いだけだな。話がへたくそな奴は、周りが何を知っているかなどお構いなしに自分が知っていることを話したがる。誰かが興味あればうけはいいだろうが…気をつけよう。


「残存兵力は?」


「我々2体のみです。」


「俺本当に魔王なの?」


ごっこ遊びってオチだったりしない?仮にネズミが犬ぐらいだとしても、大人1人倒すのがやっとな戦力な気がするんだけど。


「何をおっしゃいますか!魔王様でなければ死の克服は不可能です!!」


「さすが魔王様、無限に再生する魔物でさえ絶命した攻撃を耐え、復活なさったのです!」


なるほど、魔王の体は蘇ることには成功したけど、魂は俺と入れ替わってしまったようだ。触れなかったが、視野が360度全方向になっている。察するに俺は球体か?思念のようなものでこいつらと会話を行っている。ネズミは感極まってチューチュー言っている。こいつよく見ると汚いな。


「ここは?」


ここ何処かわかったところで何かあるわけではないんだけど、こいつらがここ周辺の情報を教えてくれるかもしれない。


「わかりません。」


「我々も魔王様の復活の際に生を受けた身です。」


俺がこいつらを生み出したってことなのかな。ともかく、情報0と。洞窟の中ってことしかわからないな。


「出口はどっちだ?」


「わかりません。手分けして向かいます。」


「そうだな…。」


許可を出そうとしたところで、松明が目に留まる。そういえば松明の陰になってる場所もはっきり見える。


ん?おかしくないか?松明の陰になっている岩の向こう側は、俺からも見えないはずだ。それに結構遠くまで見えるじゃないか。意識したらもっと遠くまで確認できるんじゃ…。


暗闇の中手を前に伸ばして壁を探すように、俺は洞窟の先の状況を見ることができた。


「お前たちの後ろ側が出口だ。」


「わかりました!早速人間を襲ってきます。」


魔物は人間を襲うものだ。特に疑問を持つのもおかしな話だが一応聞いてみる。


「なんで人間を襲うんだ?」


「…?」


ネズミとスライムが意気揚々と出口に向かっていたが、まるで別の化け物と対峙しているような圧を感じた。なんだこいつらの、雰囲気変わった?


「なぜ人間を襲うのか、でしょうか?」


俺はない唾を飲み込む。悪寒が止まらない。


「それはーーーー。」


混乱する内容だったはずだが、冷静な自分。答えを聞いた俺は難なく納得してしまったことに笑いが止まらなくなった。

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