第11話 創造神の孫みたいなもんなんだけど、それじゃダメ?

「過去に行けないかって?それ小さい子が読む絵本じゃない?」

 フィオナが小さい頃よく読んでいた御伽話の絵本を見せながらアルティスに尋ねていた。


「神様が出てくる御伽話おとぎばなしよ?だってこの物語に出てくる神の御業みわざって、

 貴方、ほとんど出来るじゃない?」

「過去へか〜? まあ、エーテルの力を借りれば、行ける事は行けるって、聞いてるけどさ?」

「だったら、過去に戻って、ご両親を助けられるんじゃないの?」

「過去は変えられないよ?そして俺の知らない過去にも行けない。

 例えば物心つく前とか、産まれる前とかね。過去にあった事、その時を強く心に思い起こす。

 それをターゲットにすれば、行く事が出来るらしいよ。

 自分が知らない過去には、ターゲットを作れないでしょ?だから行く事は出来ない。

 そして考えてみて?過去を変えたら今が変わるでしょ?

 現在に戻る為のターゲットが無くなる。過去を変えたら、今に戻れなくなるんだ」

「だから、過去は変えられない……か。なんか歯痒いね」

「だね……でも、過去を変えなくても良いんだ。父さん母さんは魂の里に居る。

 いつでも会いに行けるし、それに、この世に戻る事を2人は望んではいないんだ」

「ねえ?そう言えば、その事は後で説明してくれるって言ってたけど?」

「聞く? 両親に会えるのは、魂と……なんだけど……

 死んだ後、魂は、創造神のじいちゃんが作った法則で、棲み分けられて、

 それぞれに、相応しい魂の里に行くんだよ?

 俺はね、ミリア姉さんに頼めば、いつでも2人に会う事が出来たんだ」

「貴方のご両親に会わせてくれるって言ってたけど、私でも魂の里に行けるの?」

「ミリア姉さんに頼めば、行けるよ?多分だけど」

「お二人には、昔お会いしてる筈なんだけど、あんまり良く覚えていないのよね?

 お会い出来るのが楽しみね」

「父さんも母さんも、きっと喜ぶよ」

「ね?ところで気になったんだけど、ミリア姉さんって、どなた?

 もしかしてなんだけど……生命神のミリア様だったりする?

 女神のミリア様……子供の頃から憧れの女神様なの」

「うん、そうだよ?女神のミリア姉さんだよ」

「あ、やっぱり?そうじゃないかな?って思ったのよ。ミリア様にも、お会いしたいな」

「うん。多分じいちゃん達にヒナを紹介する時に会えるよ?」


「ところでアル?さっきの貴方の叔父さんとの話だけど、爵位を返せって言ったわよね?

 貴方は爵位が欲しかったのかしら?もしかして私との婚約の為?

 貴方今、平民みたいな?地位あやふやですものね?」

「えっ?そうなの?今のままじゃ婚約出来ない?無理?

 でも俺、創造神の孫みたいなもんなんだけど、それじゃダメ?」

「さあ?どうなんでしょ? う〜ん、みたいなものって、言われてもね……」

「爵位を返せって言ったのは、そもそもは、婚約の為じゃ無いんだよ。

 父さんの領地、フェイト領の民が、重税で苦しんでいて、インフラって言うんだっけ?

 たったの10年なのに、水道、下水、道路やらなんやらも、

 老朽化を放ったらかしで酷い事になってんだ。

 学校なんてボロボロ。子供が怪我をするんじゃないかって心配……

 領民が苦しんでる姿を神界から見てて、何とかしなきゃって思ってたんだ。」

「そんなに酷いことになってるの?フェイト領?」

「そうなんだ。それだけが気がかりで……そもそも貴族とか領主とか、俺に務まると思う?」

「え〜と……無理?」

「で・す・よ・ね〜 疑問形なのはチョイ嬉しいけど……

 爵位返すと言ってきたらどしよう?

 やばっ!深くは考えてなかった……」


 父の愛していたフェイト領の、民を守り助けたいって、

 常日頃から思っていたから、ついああ言ったのだが、その先の事は全く考えていなかった。

「政治?とかそう言うの、何も分からん。どしよう、ど〜しよう!ヒナ〜」

 助けを求める様に、フィオナを見つめる。

 勿論フィオナは、領地経営とか、そういう教育も、充分にされてきているだろう。


「心配召されるな。私が英雄殿の下に、確かな家臣を見つけてきましょう」

 ドアの影からハーゲンが出てきた。そこから全てを見聞きしていた様だ。

「ハーゲン様!是非是非よろしくお願い致します」

 手を握り、上下にブンブン振る。ハーゲン様だと?何処の誰だ?この調子の良い猫は。

「ハーゲン様とか、調子狂いますな?いつも通り、ハゲでも何でも良いですぞ?」

「とんでもないことでございます。頼りにしております。宰相殿」

 やれやれと、苦笑いをするハーゲンだったが、

 実際アルティスは、この宰相が嫌いでは無かった。いやむしろ結構好きだった。

 揶揄からかううと反応が面白く、良い遊び相手だったのだ。

 く言うハーゲンも、幼い頃のアルティス、そして今のアルティスも結構気に入っていた。

 ましてや、大切な娘の命の恩人でもある。

 フェイト領地の重税の件も聞き捨てならない。税の上限は国によって、決められている筈だった。

 アルティスを、全力で助ける事に躊躇ためらいはなかった。

 そしてハーゲンを信頼しているからこそ、胸を撫で下ろすアルティスだった。

 ここはハーゲンさんに丸投げだ〜

「又、悪い顔になってますよ?アル」

「悪い顔って、どんニャ顔?」

「ハイ!」

 手鏡を差し出すフィオナ。

「イケメン!」

「貴方今、猫になってますけど?」

「ニャ?」

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