信号待ちで追突された!
崔 梨遙(再)
1話完結:900字
29歳の時に、僕は交通事故に遭った。岡山から広島に遊びに行く途中だった。信号待ちで完全停止しているところに、軽自動車がノーブレーキで追突してきた。僕の車は新車だったのに、一瞬で事故車になってしまった。
衝撃と驚きで、しばらく呆然としてから、追突されたと気付いた。勿論、こちらは信号待ちの完全停止だったから、100%相手が悪い。正常な思考に戻ると、加害者に対する怒りが湧いてきた。
僕は車を降りた。すると、軽自動車から加害者の女性が降りてきた。てっきり“すみません!”と言ってくると思ったら、
「これって運命の出逢いですよね?」
と言われた。
「は?」
僕は言葉が出てこなくなった。言葉は出てこないのに、開いた口が塞がらない。
「私、今週の占いで、“運命の出逢いがある”って書いてあったんですよ」
「はあ」
「これが出逢いなんですね-!」
「失礼ですが、お幾つでいらっしゃいますか?」
「49歳です」
「僕、29歳になったばかりなんですけど」
「運命は年齢の壁を越えますからね」
その女性は、小太りで(僕の基準では)ブサイクだった。
「私、理恵っていいます。OLやってます。趣味は……」
理恵と名乗る女性は自己紹介を始めた。僕は、それを遮った。
「とりあえず、事故証明が必要なので警察を呼びましょう」
相手が冷静じゃないので、逆にこちらが冷静になった。警察と保険会社に電話して、事故の一件を処理をした。
帰るとき、その女性から電話番号を聞かれた。教えてしまったが、後で保険会社からは、“全て保険会社に任せて、当事者同士で連絡をとらないように”と言われた。
その女性も、同じことを言われたようだった。
翌日、僕は体調を崩した。何がなんだかわからない、初めての症状だった。病院へ行ったら、整形外科に回され、その症状が“ムチウチ”だと知った。
“あの事故のせいだ!”
僕は病院から帰ると横になった。余談だが、ムチウチを治すのに、それからかなりの時間を必要とした。
僕が震えるくらい怒っていると、電話が鳴った。理恵からだった。理恵は言った。
「これって、運命の出逢いですよね?」
信号待ちで追突された! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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