第77話 意思決定…

 あの後も追加で色々と実験したところ、α領域は土星の輪に対し水平方向だけではなく、垂直方向にもかなりの厚みがあることがわかった。その厚みは土星の輪に対し、上下3,000〜8,000km、土星に近づくほど厚くなっている。


 土星の輪を上下から、直接シンデンSSのポイントへ向かうことも考えていたけど、意味がないとわかった。


 そして、最終的に私の出した「ナガトが突入する」という決断にディーコンが猛烈に反対した。


 理由は「不確定で危険度が高すぎる」から。


 そりゃそうだわ、言いたい事はわかる、マーキュリーズの第一優先はの存続、私だって出来ればリスクなんて犯したくない。


 でも、そのリスクをとっても余りある利益が、虹色サルガッソー領域から獲得出来ると私は考えてる。さらに現場で臨機応変に対応するとなると、私が行く必要があるのよね。


 メイとテイラーはどうか?


 メイはマーキュリーズの合議決定に従うと言い中立、テイラーは条件付きで賛成、ただし、テイラーの条件付きは反対の意思が強い。

 テイラーの条件とは、「脱出できる可能性を示せ」というもの。つまり100%じゃなくてもいいから、脱出出来ると言う道筋を立てろという事。


上から目線。


 正直に言って、成功の確率の高い方法は今はないわ。


 ただし、目の前の虹色サルガッソー領域には、多種多様な宇宙船が捕らわれている。私はそれらが脱出の鍵だと思ってる。マーキュリーズが言う不確定過ぎると言う懸念もわからなくはない。でも「冒険」と「奇跡」は確率論だけでは推し量れない。


 主題は「特殊戦機の救出」

 副題は「未知なるテクノロジーの獲得」


 メイもテイラーも、目の前に散乱するオモチャ達に好奇心が拭えないのも事実、だから曖昧な判断を下してる。ディーコンだって、SS達を救いたいのが本音。


 さぁどうするマーキュリーズ?、直感は計算だけでは判断出来ないわよ?


 改めてマーキュリーズに対し、私の意思を伝える。


「虹色サルガッソー領域に突入し、SS1及びSS2をサルベージを決行する、そして我々が領域を脱出する鍵は囚われた宇宙船群テクノロジーにある。脱出するまでに時間を要するかもしれない、何年、何百年、何万年とかかるかもしれない、それならそれで結構、ナガトの船体が朽ち果てるまで、皆には付き合ってもらいます。時間が掛かっても、ワタシは必ずや成し遂げる、以上」


 すると、テイラーから

「生産開発部門、機器保全部門、ナガトの意思決定に従う」


 ディーコンからは…

「電子作戦部門、戦闘技術部門、ナガトの意思決定に従う」


 そしてメイからは、

「電脳管理統括部門、ナガトの意思決定に従う」


 そしてマーキュリーズの総意が返されて来た

「我らはナガトと共に」


 私の強い決意に反対意見は出なかった。


 …


 さて、とは言え何も準備せず無謀に突っ込んで行くこともないわ、まず長期作戦になる事を考え、拠点を作ることにした。


 どこにか?


 土星の衛星は沢山あるのよね。


 タイタン、エンケラドス、ミマス、イァペトゥス…、土星が輪を形成しているのもあって、とんでもない数の衛星が存在してる、木星の比ではありません。


 その中で最大の衛星タイタン、丁度私達はタイタンの公転軌道上にいて、目の前に見えている。土星からの距離も離れてるし、比較的安全と見て、あの星を拠点にしようと思います。


 資源は、エンケラドスからも調達すべく、私達は行動を開始する。


 なんでエンケラドスから資源調達か?、ふふ、それは哨戒中のゲッコウがある物を見つけたから。前に冗談で言ったことが現実になりそうなのよね、


 私達は二手に別れ、テイラー達はタイタンで拠点造り、私はエンケラドスに向かった。

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