第52話 準備完了…
私の当面の目標は、カイパーベルト領域への到達。
そこまでは今いる位置から最短で50天文単位あるかないか、約90億キロの旅ね。そして最終的にはヘリオポーズを超えて太陽系の外へー……
ちなみ私の現在位置は、ほぼ木星の公転軌道上です。太陽からはおおよそ6天文単位程。ケレス沖海戦で大破に近い状態に陥り、足止めされ、まだ目標の1/10しか来ていないわ。
本当なら脇目も振らず、真っ直ぐ進めばカイパーベルトまでは、そんなにたいした距離じゃないんだけどね
…でも実のところ、太陽系と唱える領域がどこまでを示すのか曖昧。
太陽から放たれる太陽風は、外へ向かうほど速度が遅くなる、そして音速以下になる境界を「終端衝撃波面」と呼び、そこまでが約90天文単位。
太陽風の流れが星間風と呼ばれる外からの流れと均衡が取れ速度が0になる面を「太陽圏境界面」といい、その境界を「ヘリオポーズ」と呼ぶ、そこまでが最短で120天文単位ほどの距離にあると言われてる。
でも太陽系を彗星などの巣と言われてるオールト雲海まで広げて定義すると桁が変わる、その距離は太陽からオールトまでが1000天文単位、そしてオールトの端面は10万天文単位と推測されてる。
んー、もはやkmで表すのも大変、パーセクという単位もあるけど、アレは正直わかりにくい。10万天文単位というのを、光が進む距離で表すと、だいたい
1.6光年
私の巡航速度で50年、最大戦速で飛び続けたとしても15年、お尻に光子魚雷をくくりつけて鼻水涙目で真っ直ぐ進んでも8年、でも今のペースで行ったら、オールトを飛び出せるのは、100年ぐらいかかるんじゃないかしら?
太陽から1番近くの恒星プロキシマケンタウリが、地球から4光年強と言われてるので、そこへ辿り着くのは、巡航速度で300年近くかかってしまう。距離感が半端ない。ちなみに1番美しく明るい恒星シリウスは、その倍の8光年です。
何が言いたいのかと言うと、月面アルファ基地のテイラーさんが残したメッセージ、「太陽系脱出」の願いを叶えるのは、実はえらい大変だという話しなんです。
まあでもね、テイラーさんが意図するその願いは、人類が滅亡した時点で、終わってるんだけどね。
……
船体の修復はほぼ終わったわ、後は主機の再起動だけ。そちらは飛びながら調整することにした。同時にユキカゼの改装も実施。
もう改装かって?、はいそうです、そのための試験航海だったんだもの。
連装砲はナガトに戻し、代わりに新たに新造した陽電子砲4基を両舷上下に搭載、そしてなんちゃって艦橋を設置、ここには光学カメラ、電探、あらゆる観測装置を詰め込んだ。また、HB弾の有効性もわかったので、2基増設。
あともう一つ、私考案の必殺兵器を搭載。それは私の方にも取り付けたわ。
ふふ、HB弾より強烈です。その時までのお楽しみ。
ユキカゼの主機については、安全面を考え少し手を加えました。チート技術の仙術で、反転重力炉と同じ仕組みを構築してみました。
…だだ漏れちゃう中性子線を抑えようと思ったんだけど、結局仙術ではもどうしよもなかった。逆に意図しなかったそれ以外の放射エネルギーは抑えることができたわ。
まぁどうせ人が乗る事なんてないしね、一旦ヨシとします。
さて、準備は完了したわ。
それでは木星に向かいましょう。
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