第51話 分析…

 私達はユキカゼが持ち帰ったデータから木星の分析を始めた。その結果から…


 まず、木星を覆うダイソン殻球


 テイラーの検分だと、構造体としては不完全で、建造途中か、既に放棄されているのではないかと見解が出された。


 その心は?


 ※ここからは対話形式


“殻球は三層構造になっている。1番内側の層Aは完全密閉される予定の構造体で、中間層BはそのAを支えるための梁にあたる構造体、そして1番外側の層は、幾つかに回転するオービタルリング構造体と推測する”


 …この映像だけでそこまで解るの?、テイラー凄いわね。確かに構造の延長線を繋いで行くと、テイラーの言う通りになる。


 放棄されている可能性の理由は?


“作業をしている形跡がない”


 あら。じゃあ木星を囲って彼らはどうするつもりだったと思う?


“不明”

“戦闘要塞化”

“木星の恒星化”


 え?、今最後に言ったの誰?


 不明と言ったのはテイラー、次はディーコン、最後のはメイだった。


 木星の恒星化??、恒星化ってなに?


“木星は質量不足から恒星になれなかった惑星、きっかけを与えれば恒星になれると推測する”


 それでダイソン殻球……そのきっかけの火種は…4大衛星?


“メイはナガトの推測を支持する”


 私とメイの推測は一致した。4大衛星イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストが現在同じ軌道を公転している理由は、木星を爆縮させるためのいわば爆薬。


 その確証画像をユキカゼは撮影していた。


 観測出来なかったカリストを除く3衛星の赤道に、墓標の様に突き刺さる巨大な杭が、正確に等間隔に配置されていた。アレは「爆縮点火器」と予想される、衛星のコアを使い、衛星そのものを巨大な爆弾にするつもりだと解る。


 そして4大衛星を同時に爆破して、木星のガス大気を燃料にして木星を爆縮、核融合反応を連鎖的に発生させて恒星化する。と大胆な仮説を立てた。


 …でも、それを成したとして、彼らにどんな利得があるのか、太陽系には主星太陽がある、確かに太陽に比べれば木星は小さいし、扱いやすいのかも知れない。

 でも、目の前に莫大な燃料タンクがあるのに、チマチマと手間をかけてダイソン殻球を造り、木星を恒星化させる必要性がわからないわ。


 そもそもダイソン殻球は完成していない。


 ひょっとして、それに気づいて建造をやめたとか?


 …いえ違うわね、もう一つの理由は、ディーコンが言ってる。


「戦闘要塞化」


 でも、私的には否定させてもらう、惜しいって感じ。その発想だとすると「宇宙船」だと思う、それも「恒星間航行用の宇宙船」。


 だけどもですよ、それも変。


 アレが地球の船じゃないのは明確。すると外から来た異星人が、何故にここで手間暇かけて、また外宇宙へ行くための大きな宇宙船を作る必要があるのか?


 解せぬ。


 推測はいくらでもできるけど、判断する材料が足りない。


 そして、その判断する材料の1つが、ガニメデにあるのよね。星図データにイエローマークされてるイオではなく、青緑マークのガニメデ。


 ガニメデの地表面に、とても大きな構造体があるのをユキカゼは撮影していた。


 そのシルエットからすると、恐らく宇宙船だと思う。地球の航宙艦でも、メインベルトの異星人でもない、全く異なる意匠の宇宙船。トンガリに似てなくもない意匠。真っ白で細長く、その全長は約120kmと巨大、スイカ級を見慣れた私でもその大きさには驚くばかり。


 ただ何故ガニメデの地表にあるのか、墜落したか、もしくは座礁して動けなくなったのかも知れない。


 異星人達は代わりの船を木星に定めたた?,それにしてはデカイ、デカ過ぎ、全長120キロの宇宙船の代わりが、直径450万キロの宇宙船?


もう桁がちょっと……


 木星は避けて行こうかと考えていたけど、そこには色んな情報がある、直接見に行く必要がありそう。


私がそう判断すると、マーキュリーズも同意した。


ただ一つ警戒するのは、ユキカゼを追いかけて来たアンノンウンの存在。


画像を見る限り、トンガリともメインベルトの異星人とも異なる。銀色に輝く薄い円盤型で反動推進器が確認できなかった。ここに来てまた別物の存在を知ってしまった。

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