第23話 誕生日プレゼント
五人で出かけた数日後のこと、珍しく朝からつゆりがビデオ通話をかけてきた。
出ない理由もないので応答する。
「おはよう」
「おはようございます、朔くん! お誕生日おめでとうございます!」
「ああ、そういや今日誕生日だったな。ありがとう」
「朝っぱらからテンション低いですねー」
「朝は基本テンション低いもんだろ」
「朔くんは昼でも夜でも低い気がしますけどね」
「それは間違いないな」
「てか、誕生日に特にこれといった感慨ないんですかー?」
「小学生の時ならともかく、高校生にもなれば人によってはそういうもんじゃないか? 欲しいものをプレゼントでもらえるわけでもなくなるし」
「そんな醒めきった朔くんに私は特別なプレゼントを用意してますから、期待しててくださいね」
「一応期待しとくわ」
朝食ができたと階下から母親に呼ばれたので、朝の会話はそれで打ち切って、プレゼントの詳細は学校で聞くことになった。
「はっぴばーすでー朔くん!」
いつもの屋上で、つゆりが音とリズムを外したお祝いソングを歌う。
気恥ずかしいけれど、僕のためにやってくれてるし、かわいらしいので最後まで聞く。
「朔くん、さっき幼稚園児のお遊戯を見る保護者みたいな顔してませんでしたか?」
「……してないよ」
「そこは即座に否定するとこですよね⁉」
「そういや、プレゼントあるって言ってたよな。見たところ弁当以外なにも持ってきてないけど」
「実は弁当がプレゼントなんですよ」
「君じゃなくて父親のつくった弁当だろ」
「というのは冗談でして、へっへー、本物の誕生日プレゼントはですね……」
「やっぱり冗談か」
「なんと、なんと」
「もったいぶらなくていいから早く言え」
「サプライズプレゼントと、早く言いたい『あるある』は、もったいぶった方がいいもんなんですよ!」
「だーから、早く言えっつってんだろう」
「この私です!」
「やっぱりか」
「え? 驚いてくれないんですか?」
「いかにも君がやりそうなサプライズだと思ったし、身一つで来てる時点でそれしかないだろ」
「プレゼントする以上、この私になにをしてもいいんですよ。なんなら今この場で押し倒してもいいですし」
「誰が学校で押し倒すんだ。さすがにそこの自制心はあるよ」
「その言い方、家でなら押し倒すってことですか?」
「さすがに僕も人並みに性欲を持ってる男子高校生だし、百パー否定はできないな」
「つまり家でなら既成事実をつくれる可能性があるってことですね! というわけで、放課後、朔くんの家行っていいですか」
「そんなこと言ってるやつを家に連れていくと思うか?」
「いやー、そのー、いつもの冗談ですって。本当はセックスよりも朔くんの部屋を見て、本棚を肴にオタク談義をしたいだけなんです!」
「信用ならんなー。君ん家に二度も上がっている以上、こっちも君を家に上げるべきなんだろうけど」
もしそういう雰囲気になっても僕の方が自制心を持っていればなんら問題はない。
逡巡してから、僕はそう自分に言い聞かせてつゆりを家に招く決断をしたのだった。
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