二章 新たな生活
第20話 到着
辺境伯領を抜けて、村々を経由しながら俺達は馬を進めていく。
「ねえ、クロウ。一体、どこまで行けばいいのかしら?」
「そうだな……魔の森付近の一番大きな都市に行こうかと思う。あそこなら稼げるし、国境から離れるから見つかりにくい。人の数も多いし色々な事情を抱える者達も多いそうだ。あそこなら、俺たちがいても変じゃない」
「そっか、そこなら平気そうね……わ、私も頑張るから!」
「ん? いやいや、お金は俺がどうにかするから」
「だめ! 私もやる!」
そう言い、ぷくーと頬を膨らませた。
綺麗になったが、こういうところは相変わらず子供っぽい。
「だが、しかし……」
「それに家に一人でいたって退屈だわ……余計なことを考えそうで」
確かに、今のカグヤに必要なのは気ままに暮らすことか。
ならば、好きにさせた方がいい……そもそも、カグヤの願いを叶えるのが俺の使命だ。
「まあ、しばらくは俺といた方が安全か。わかった、考えておくよ」
「うんっ! ごめんね、わがままばっか……」
「別にいいさ。今までずっと、一人で頑張ってきたんだ。それくらいしても、バチは当たらないだろう。諸々のことは、俺に任せておけ。これでも、そこそこ優秀なんだぞ?」
「ふふ、知っているわよ。でも、私も何かしたいわ。クロウのお荷物にだけはなりたくたいの。もちろん私にできることなんか、たかが知れていると思うけれど……」
「まあ、カグヤはそういう子だよな……ん? 何か聞こえてくる?」
俺が何かを捉える。
音自体はわずかだが、この空気感……戦場の匂いがする。
「……私には、何も聞こえないわよ?」
「どっちにしろ進行方向だ、行ってみるとしよう」
「わかったわ!」
そう言い、ぎゅっとしがみ付く。
……背中に当たる感触に、成長したなと場違いな台詞が浮かんできた。
しばらく進むと都市が見えてきて、予想通り戦闘が起きていた。
魔物の大群と、冒険者達が戦っている。
「ゴブリンやオーク、トロールまでいるな……数が多い」
「こ、これが魔の森付近なのね」
「流石に、これが日常だとは思えんが……ほう、やるな」
流石は魔の森から国を守る者達だ。
連携をし、危なげなく魔物を倒している。
それでも、いくつか危ない箇所があるか。
「どうするの?」
「戦闘の邪魔になってはいけないが、助太刀するとするか。これから、ここでお世話になるのだからな……カグヤ、失礼する」
「きゃっ!」
後ろにいたカグヤを前に持ってくる。
戦いならならば、こちらの方が安全だ。
「これでよしと」
「よし……じゃないわよ! いきなりさわられたら、ビックリするじゃない!」
「す、すまん」
「全くもう……あぁー! 私もうじうじするのやめ! どうせ、私はこう言った方がいいんでしょう!? クロウ、やっちゃいなさい!」
「おおっ、懐かしい感じだ……それでこそカグヤだな」
「ほら! いいから早く!」
「ククク……覚悟しろよ、今の俺に敵などいない」
久々にカグヤの元気な姿を見れた俺は、二本の剣を構えて馬を走らせるのだった。
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