キマイラ


 スムルは、バスケットコートに居た全員を自分の近くに集めた。


「何かの縁だし、チームリーダーのオレがうちの『キマイラ』のメンバーを紹介しておくよ」


「スムルがリーダーだったの?」と雄大。


 スムルはニヤッと口角を上げて頷き、みんなの方に向き直した。



「順番に行くぞ。まずはタクノ・ヴァインスとバヤハ・ラマハルだ」


 スムルは順番に手で示し紹介する。彼らは、昨日ライアンとディエゴを助けてくれた男たちだ。


「よろしくな!」


 と、2人は声をシンクロさせながら挨拶した。


 彼らはどちらも190センチほどの高身長。


 タクノは水色のライダースジャケットを着用。後ろで束ねた長髪、アゴ髭が特徴的だ。バヤハは赤色のライダースジャケットを着用。短髪で切れ長の目。額のゴーグルがトレードマークだ。


「こいつらは、うちではツインタワーと呼んでいる。まぁ、オレの両腕だ」


 

 スムルは、他のメンバーも次々に紹介してくれる。



「レイヴィス・ロックランドは、うちで1番の武闘派だ。見た目はいかついが、甘い物が好物のいい奴だぞ」


「おぅ⋯よろしく頼む」


 そう挨拶したレイヴィスには、不器用な感じが漂っている。


 ライアンが「あいつ絶対強いな⋯」と、レイヴィスの上腕二頭筋を見ながら言った。



「ムム・プリムシア。こいつはとにかく明るい奴なんで、みんな仲良くしてやってくれ」


「みんな、よろー!」


 そう言ってピースサインをするムムには、ギャルっぽさが滲みでていた。


 リタが「景気の良さそうな奴だな」と笑った。



「プタラ・サガトム。無口で変な奴だが、けっこう面白い奴だぞ」


「⋯⋯よろしくお願いします」


(わしと似てるかも⋯⋯)


 プタラを見たディエゴは、密かに自分と同じものを感じていた。



「ユパケ・ジルム。口は達者で楽しい奴だが金だけは貸すなよ。こいつは返させねえから」


「おい! スムル! 俺だけマイナスな情報入れてんじゃねえよ!」


 全員がちょっと笑った。


 その中でジェフが誰よりも笑っていたら、


「お前ちょっと黙れ」と、ユパケが本気のトーンで怒った。ジェフはすぐ静かになった。



「カル・スズ。カルもレイヴィスと同じく、うちのチームでは武闘派だ。でも、普段は優しいお姉さんだぞ」


「この城下町や、異世界のことで分からないことがあったら気軽に聞いてね」


 カルはそう言って微笑んだ。


 エレナが「あの人クールビューティーで格好良いね!」と、隣りのリタに言った。



「ザヤ・ミルシャ。酒が強くて、気が短いが、さっぱりした好い奴だ」


「よろしく頼むよ」


 そう言ったザヤを見て、


(リタさんと雰囲気が似ている)


 とビンは感じた。



 雄大はキマイラのメンバーを、改めて見廻してみた。誰もが無骨でお世辞にも育ちが良いような雰囲気がない。一言で表すなら

 しかし皆に自由な雰囲気があり、それぞれが屈託ない笑顔を見せていた。。雄大にはそう映った。



「他にもメンバーは居るけど、今日居るのはこんなところかな」


 スムルは言った。

 次に雄大たちも順番に自己紹介をして互いに、交流を深めた。



「なんかキマイラのみんなの服装が、見たことあるものが多くて落ち着くよな」


 雄大が小松に言った。


「そうですね。たったそれだけの事なのに、なんか安心します」


 2人の会話を近くで聞いていたカルが「うちらは異世界の服であろうが、良い物は取り入れるスタイルなんだ」と横から話しかけてきた。


「そうなんだ。良いことだと思うよ」と、雄大は共感した


 カルは急に後ろを向いて着用している特攻服の『夜露死苦』の文字を、雄大と小松に見せつけた。


「どうだ! これお前らが生まれた日本ってところで、大流行してるんだろ?」


 彼女は無邪気に聞いてきた。


「うん、そうだな……」


「まぁ、流行ってるっちゃ流行ってるね……一部で⋯⋯」


 雄大と小松は、彼女の夢を壊さないように、カルに真実は話さなかった。

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