A−12号室・3


 各自ベッドに荷物を置いてから、4人が中央のテーブルに集まった。



 言い出しっぺのライアンから自己紹介していく。


「オレは53歳だ。1993年のアメリカのカリフォルニア州からやってきた。元プロボクサーで今はスーパーで働いている」


 ライアンはハキハキと喋る。声色が明るいし声も通るし大きい。体育系の人という感じが彼には似合っていた。少しゴールデンレトリバーに似ている。



 次は雄大の番だ。


「おれは38歳。2022年の東京から飛ばされてきました。モノマネ芸人をやっています」


「意外だな。あんたはコメディアンだったのか!」


 ライアンが即反応する。


 雄大の方を見て、小松がニコッと微笑んだ。


(だから、その笑顔は何だよ……)



 次がその小松の番だ。


「僕は32歳。堂本さんと同じ時代の日本からやってきました。彼のモノマネも観たことがありますよ。」


(なるほど!……だから彼はずっとこっちを見てきたのか)


 雄大は理由が知れてようやくホッとした。


「同じ国の同じ時間軸からやってきたのか。それはすごい縁だな!」


 ライアンのリアクションが良い。彼はまとめ役が向いていそうだ。

 

 小松が続ける。


「埼玉の大宮で美容室の店長をしています」


(しかも同じ関東住みか!)


 雄大のテンションが少し上がった。この頃には彼に対する警戒を解いていた。


 小松からは穏やかで柔和な雰囲気が出ていた。彼はプレーンというか、とても薄い顔立ちをしている。



 最後にやや伏目がちのディエゴが自己紹介をする。


「わしは……72歳。1985年のブラジルからきました…農業をやってる…」


 ディエゴは声がやや小さく、低めの声。独特の間とテンポで話す。暗いわけではなく、恥ずかしがり屋という雰囲気だ。目がぱっちりしている。


(転移された異世界者たちは、なぜか来た時代も国も年齢もバラバラだった)

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