第10話 【魔法】

((大丈夫ですか?))


((大丈夫です...))


彼女たちは平然としているのに俺だけこんな...

俺は彼女たちに恩を返したいと思っているのに

こんなにも情けなかったら力になれそうもない


((最初はそうなってしまうのは仕方ないです

カレンはならなかったですけど、私も最初のうちはヒカルさんのようになってしまいました

から...))


俺を心配して慰めてくれているのか?

もしかしたら俺の心中を察しているのかもしれない。

このまま落ち込んでたらダメだ...

よしっ 切り替えて行かないと


((本当に大丈夫ですよ。

それよりカレンさん凄かったです

凄すぎて 僕の目には追えなかったです。))


((エッヘン カレンは凄いんです。))


そう言って彼女は両手を横腹に当てた


((あ そういえば魔法が見たいんですよね

次は魔法を使って貰うようにカレンにお願いしてみます。))


((魔法...はい 見てみたいです!))


そう言ってカレンを見てみると

彼女はゴブリンの死体に何かをしている


((カレンさんは何をしているんですか?))


((ああ あれはゴブリンを倒したことを証明するために死体の一部を剥ぎ取っているんですよ

別に部位はどこでもいいんですけど、ゴブリンだと簡単にはぎ取れる耳を剥ぎ取るのが普通です。))


((死体を...))


((私もカレンを手伝ってきますのでヒカルさんは待っていてください))


死体を剥ぎ取る?

俺には出来ないな...

いや 俺は彼女たちの助けになりたかったん

じゃなかったのか?

そんなことをしたくない したくないけど...


((...僕も手伝います))


((え? 別に大丈夫ですよ すぐに終わるので))


((手伝わせてください))


((分かりました。 でも無理はしないでくださいね?))


((はい...))


彼女からナイフを貰いゴブリンの死体に近づく

足が震える、手が震える、息が荒くなる、

「はぁっ はぁっ」

過呼吸になりそうになる

俺は体を動かす 俺の持っているナイフがゴブリンの耳触れる。

ナイフを持つ手に力を入れる...

手が震えてなかなか切れない。


あぁ やっぱり俺にはできない。

...

そんな震える手を小さな手でミルは握ってくれた。


((大丈夫ですか? 辛いならやらくていいんですよ?))


((いえ 心配かけてすみませんでした。

もう大丈夫です。))


呼吸を整えて、もう一度 手に力を入れた。

震えは止まっていた。

ナイフが肉にくい込んでいく、最悪な感覚だ。

途中でナイフが止まってしまった 軟骨に当たったのだ

俺はもっと力を入れた

「グシャッ」

嫌な音を立てて耳が落ちた。


((お疲れ様です。))


俺は作り笑い浮かべた。

顔は引きつっていただろう。


((手を出してください))


((え? 分かりました))


手を出すとミルは俺の手を両手で握った


((えっと どうしたんですか?))


((いやな感覚でしょう? 魔物とは言えど死体を剥ぎ取るのは

なので私の手を感じて、上書きしてもらおうかと思いまして、

いやでしたかね?))


((いえ ありがとうございます。))


彼女の手は柔らかくて、少し冷たくて、

それでも温かかった。

しばらく握りつつけた。


((もう大丈夫です ありがとうございました。))


((は、はい ))

そう言う彼女の顔は少し赤くなっていた。


男性に慣れていないのだろう

それなのに俺のために頑張ってくれたのだ。


((他のはカレンが剥ぎ取ってくれたようです))


((え? いつの間に? 早いですね))


((まあ カレンは慣れていますからね

さあ 次のゴブリンを探しましょう。))


俺たちは次のゴブリンを探すために歩き出した

ミルはカレンと何かを話している

そうして5分程が経った

すると会話が止んだ


((カレンに魔法のことを頼んだら、まかせて と言ってました。 それと私たちが話している事が多いので疎外感を感じているようです。

なので 早く言語を覚えて3人で会話ができるといいですね。))


((そうなんですか。 そう言うことなら今まで以上に頑張ります!))


((え? いえ 急かそうという訳ではなくてですね 今までどうりで大丈夫ですよ。))


「ガサッ」


((物音がします。あの木の影に隠れましょう))

木の影に音を極力出さすに移動した。


((見てください あそこにゴブリンです。))

指を刺された方向を見るとゴブリンが4体いた


((4体ですか 今回は少ないですね))


カレンが木の影から出てゴブリンの前に出た


「ギャァァァァァァ」


ゴブリンはカレンの姿を見ると叫び出した。

俺は思わず耳を押さえた

草の影からゴブリンが集まってくる。

もしかして仲間を呼んだのか?

するとあっという間にゴブリンの数が増えた。

最初の5倍くらい さっきの戦いの2倍くらいに増えた。

流石に数が多すぎるのでは?

そう思いミルの方を見た

彼女は今までと変わらず平然とした顔を浮かべている。

俺の視線に気づいたようだ。目が合った


((大丈夫ですよ。カレンならあの程度どうってことないです。

しっかり見ていてくださいね。一瞬ですので))


俺はカレンの方に目を向けた


すると彼女は手を振りあげた


「ヒュォォォォォ」


周りは急に静まり返り 風のきる音が聞こえる


ゴブリンも何かを感じ取ったようにその場から動かない


彼女の手に光る粒子のようなものが集まっていく


その手を勢いをつけて振り下ろした その時

俺の体が吹き飛ばされそうなくらいの突風が吹いた。


思わず目を瞑ってしまった。

その目を開くと

さっきまでいたゴブリンが皆切り刻まれて死んでいた

何が起こったんだ?


((どうですか魔法は? 凄いでしょう

今のは風の魔法です。))


((魔法...今のが... 凄い 凄いです!))


今のが魔法か凄まじいな

さっきまでのゴブリンがこんな姿に...

やっぱりまだ気持ち悪いな...今回は臓物も見えている。 せっかく魔法が見れたのに気分が落ち込むなあ


そう思いカレンの方を見た

するとエッヘンと言いたげに両手を横腹に当てていた。

姉妹そっくりだ


「ははっ」


思わず笑ってしまった。

カレンは何故笑ったのか分からないと言いたげに困惑している。


本当にに彼女たちには頭が上がらないな、

俺はこの世界にきて彼女達に勇気づけられて

ばっかりだ。



























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