異世界チート無双を望んだ結果

土屋

第1話

異世界でチート無双してやるぜ!

こうして俺は、あらゆる幸福を指定した他人から吸い、自分の幸福へと変えるスキルでのし上がった。金、女、権力なんでも手に入れた。

だが、残された子孫が心配だ。これまで奪ってきたヤツらからやり返されたらどうしようか。

そうだ!そんな間違いが起きないよう、世界の構造を俺たちに都合のいいように変えるんだ。決してズルなんて言わせないぞ。だって俺は、前世で不幸な目にあったんだからな。今まで奪われてきた俺の、これは、当然の権利だ。女神を殺して世界の理を書き換えてやる!


そうして、負の感情を抱えた男の魂が次に目覚めたのは、300年後の同じ国の奴隷市場だった。男には、転生してから思考する余地がなく、反旗を翻す力は王の呪いによって全て奪われていた。国王の呪い、すなわち過去の自身が国全体にかけた呪いの誤算だ。自身の魂さえも縛るとは思いもしなかったのである。


こうして、この男は自身の呪いによって永劫この同じ世界からは抜けられない。女神の導きによる異世界への転生は外部からのチート転生者が反逆を起こすのを防ぐためにお互いに行き来ができないよう、この男が魂の流れ道を閉じてしまったからだ。これには他の世界を眺める女神たちも困っていた。


当初、女神たちは取り返すことを考えた。しかし、もはや自分たちと同じ女神の魂を喰らっている男に、自分たちの力で取り返すことが難しく、それでも取り返そうとするならば、問題を母なる女神に伝えなくてはならないからだ。

そんなことをすれば、失望されてしまう。次に姉妹たちは隠蔽を考えた。たとえ母にバレたとしても、実験として1つの世界を眺めることはよくあること、その実験で犠牲となったのが姉妹の1人だったのだと伝えれば良いのだ。

口が裂けても、自分たちが与えた権能の調整ミスで姉妹の1人が力を、孫達を、私たちの水槽の1つが奪われたなどとあの大雑把で万物万象を愛する母に伝えようものならば、「また1からやり直す」と、万物の創造主たる母以外の全てを消されかねない。

姉妹たちは口裏を合わせた。一方、母なる女神は全てを知っていた。

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異世界チート無双を望んだ結果 土屋 @2chiya

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