リアファン〜リアルファンタジーな世界の現実は甘くないようです

夢野 彼方

第1話 プロローグ

  ファンタジーに遭遇出来たけど死にかけてます。


 何時もと同じ朝

 何時もと同じ様に学校に行く

 何時もと同じ友達と過ごす


 そんな何時もと変わらない日常を送る中で退屈を感じていた僕はほんの少しだけ、些細なきっかけで想像もつかないような何時もと違う日常を送っていた


 なんて言うんだっけこういうの。確か蝶の羽ばたきで台風が来るみたいな例え話で使われるんだっけ?バタフイ………なんとか。………バタフライって言うと水泳の方が頭に浮かぶなぁ


 最近は暑くなってきてるしプールに行くのもいいかな。あぁ、でも出掛けるのを面倒くさがって結局行かずに終わりそうだけど。いやゆかりに連れられて行くことになるかな。縁も僕と同じでナマケモノ系人間なのに面倒見がいいから部屋に篭る僕を引きずっていくのかな。まぁ、もうそんな事は無いんだろうけど


 ……誰に言う訳でもないけど思考が逸れた。半分はわざとだけど。だってそうでもしないとおかしくなりそうなんだ。いや、おかしくなった方が楽なのかな


 さてと今僕が置かれてるこの状況は非日常的なんて生優しいもんじゃない。非現実的で常識的にあり得ない出来事に思考を鈍らさせらて思考がまとまりきらない


 確かに僕は退屈な日常に変化を求めていた。加えて憧れていた様な場面に自分が身を置いている。でもそれを喜ぶ事は出来なかった。まぁ、もうこの先もそれは出来ないけどね。だって


「はぁ、もっと面白い事を沢山したかったなぁ」


 僕の人生は多分ここで終わるだろうから。


「グギャギャ」


 僕が諦めの境地にいる事を感じ取ったのか僕の目の前にいるそいつは愉悦の表情を浮かばせ嗤い声をあげる。


 緑色の肌をした小学生程の体躯。小汚い腰布だけを纏い、その手には体格に合う小さな棍棒を持っている。ことファンタジー作人においては定番のモンスターゴブリンを想起させる姿をしていた


 その全体的にひょろっとしている小く細い体の見た目に騙されそうになるけど力は僕と同じくらいか恐らく上だろう。加えてその身長から小回りも効き足の速さも恐らく同様だと思う


 断定的な言い方をしないのはこいつらにとって僕は狩りの対象ではあるけど、狩りは狩りでも猟師のやる様なものじゃなく遊びでやる感覚の狩りで僕の事は玩具としてしか僕の見ていない。その証拠に最初は何とか逃げられる程度の速度しか出さなかったのに僕が逃げられると希望を抱いた瞬間にいきなり速まっていたのがいい証拠だ


 その事からも中々の強敵で逃げる事は厳しそうだ。加えて言えば


「「「グギャギャギャギャ!」」」


 絶望的な事に目の前の存在と同じ声質の嗤い声が全方位から聞こえてくる。しかも上からも聞こえてくる。僕は恐怖で震えて、今すぐにも逃げ出しいけど負傷した今の僕じゃそれは叶わない。なのでせめてもと怪我で重く感じるのを無視して何とか首を動かし、もたれかかっている木の上の方へと視線を向けるとそこには枝の上に潜んでいたゴブリンが2匹確認できた


 わざわざ木の上に隠れていたところからして僕には最初から逃げ道はなかったんだろうね


「グギャギャッ!!」


 いつの間にか目の前にまで来ていたゴブリンは手に持った棍棒を僕目掛けて振り下ろしていた


 その光景は酷くゆっくりに感じた。今この瞬間まで僕はなんとか助かる方法はないかと考えて、無理だと諦めて現実逃避をしてはやっぱり死にたくないと状況を確認してはまた諦めるを繰り返していた


 けどそれももう終わりだ。僕の命を奪うその獲物は振り下ろされた。そしてそれを防ぐか回避する手段も力も気力も今の僕にはない。ここから助かるには何かしらの奇跡がないと無理だ


 そしてそんな都合のいい事は起こらないだろう。奇跡はそう起こらないからこそ奇跡っていう言葉になるんだから


 この状態で一番助かる可能性があるとしたら起きたら全部夢でしたって言う締まらない展開ぐらいしかないかな。夢の中で痛みを感じると現実だって言うけど、そんなことなくて実際は夢の中で痛みを作り出してるらしいから。何より僕はファンタジー系の物語が好きでこういう展開に憧れがあるのが影響してかそういう夢をよく見る


 それに夢で蝶になっていて自分は人間なのか蝶なのか、本当はどっちが見ている夢なのか分からなくなる話みたいに現実感が強すぎる夢だったりしないかな


 まぁ、それも都合が良すぎるね。こんなファンタジー展開に出会えたのは嬉しいけどこれは流石にないよ。こんな


「こんな訳のわからないまま死ぬのは嫌だな」


 なんでこんな事になったのか分からない。今日もいつも通りの日常を送っていたはずなのに。違いなんてほんの些細なものなのにと今日の出来事が頭の中を駆け巡っていく


 この時の僕は知る由もなかった。まさか今日という日が僕の最後の日じゃなく待ち望んでいた退屈で平凡で幸福な日常からの別れになるなんて。そしてこの街の裏の世界へと足を踏み入れる始まりの日になるだなんて

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