卵とセリフ
頭野 融
卵とセリフ
男が家のドアを開けると黒いものが飛んできた。何事かと思ったが、すぐに理解した。
ガァ
飛んできたそれはカラスだった。奥から妻が慌てて出てくる。私が早く帰ってきたのが悪いとでも言いたげな顔であった。要領を得ない説明を要約すると、数か月前にマンションの駐車場に小さな卵が落ちていて興味本位でそれを拾ってきて、温め続けていたのだという。昔から好奇心旺盛だった彼女らしいと言えば、彼女らしい。
それが一週間前に孵って今は、もう立派なカラスだ。もっと早く言え、というか俺にも断りを入れろと怒鳴ると、
「数日前に言うつもりだった。」
と。ここ最近残業で疲れていた私を気遣っていてくれたようだ。
カラスがアホと鳴いた。
卵とセリフ 頭野 融 @toru-kashirano
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます