第4章98話:盗賊

俺は思った。


(まあ、助けなくてもいいだろう)


あの程度ならば、自力で切り抜けられる。


ノルドゥーラを放置して俺は先に進む。


実際、すぐにノルドゥーラは2体のオーガを蹴散らして、俺に追いついてきた。


ノルドゥーラは言った。


「この地の魔物どもは、喧嘩を売る相手を選ばん愚か者が多いのう」


「そうだな」


俺は魔力が少ないし、ノルドゥーラも魔力を隠しながら行動しているから、魔物たちも警戒しないのだろう。


「まあ誰が襲ってきても、虐殺するだけだ。魔物だろうと、人間だろうとな」


降りかかる火の粉は全てねじ伏せる。


それが俺のポリシーだ。





そうして俺たちは、魔物を蹴散らしながら浅層まで辿り着く。


樹海の浅層――――


ここまでくると強い魔物も減ってきた。


地形も悪路がなくなり、動きやすい足場あしばになっている。


俺たちは跳んで移動するのをやめて、普通に歩き始めた。


森を歩く。


浅層といえども鬱蒼うっそうとした森だ。


視界はあまり良好ではない。


しげみを踏みしめ、草薮くさやぶ蹴散けちらしながら、俺たちは歩みを進める。


やがて。


目的地にたどり着いた。


「ここだ」


と俺は言った。


眼前にあるのは洞窟だ。


入り口が、ぽっかりと口を開けている。


「ただの洞窟じゃな」


「そうだ。しかし、場所はここで間違ってない。この洞窟の中に、地下神殿ちかしんでんがあってな。そこを攻略すれば竜玉が手に入る」


「ほう? ダンジョンがあるのか」


「ああ。浅層にあるダンジョンだが、隠しダンジョンなので、出てくる魔物も強い。だが―――――」


「おい」


と。


横合いからいきなり声をかけられた。


振り向くと、そこにいたのは4人の盗賊である。


男の盗賊たちであった。


バンダナの男盗賊おとことうぞく


スキンヘッドの男盗賊。


小太りの男盗賊。


チャラい男盗賊。


以上の4人である。


「おうおう、男女だんじょ二人ふたりで仲良く森でデートか? 楽しそうだなあ?」


チャラい男盗賊が言った。


スキンヘッドの男盗賊が疑問を口にした。


「冒険者か? ここら一帯が俺たちの縄張なわばりだと知って立ち入ってきたのかよ?」


「知らん。……お前たちは盗賊か。安心しろ。用が済んだらすぐに立ち去る」


そう俺は答える。


すると。


「あァン!? ヒトの縄張りに入ってきて、タダで帰れると思ってんのかよテメエ。がねすべて置いたうえで、女よこせや!」


とバンダナの男盗賊がイキってきた。

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