第4章87話:岩原へ

―――第4章―――




転移魔法によって、俺は転移する。


転移先は……フィオリト岩原がんげん


刃竜はりゅうノルドゥーラがいた場所である。


「む……?」


転移してきた俺に気づいて、ノルドゥーラが顔を上げた。


「戻ってきたのか。まったく気配がなかったが……いったいどこから現れた?」


「俺には転移魔法があるからな」


「な、なんだと……? 転移……?」


「そうだ。転移だ」


俺は肯定する。


ノルドゥーラは唖然あぜんとした。


そして彼女は告げた。


「伝説の転移魔法をあやつるとは、つくづく規格外の男じゃな。それで? リースバーグ神殿国での目的を果たせたのか?」


「うむ。実は――――」


俺はリースバーグ神殿国であったことを、ノルドゥーラに説明した。


神殿国に入るなり、衛兵に絡まれたこと。


コルデリオダンジョンで目的のものを手に入れたこと。


神殿騎士団や精霊と戦い、討ち果たしたこと。


「――――というわけで、俺は精霊ネア・リースバッグを抹殺まっさつした。今後、いろいろ慌ただしくなるかもしれん」


と俺は結んだ。


ノルドゥーラは絶句していた。


「精霊を殺したじゃと? 本気で言っておるのか?」


「ああ、本気だ」


「おぬしの強さは理解しておるが、さすがに信じられん。冗談で言っておるのじゃろ?」


「証拠……というわけではないが、ネアが持っていた霊槍れいそうだ」


俺は回収しておいたネアの武器を、アイテムボックスから取り出した。


精霊聖槍・ネリスヴォルンという名前の武器だ。


「こ、これは……なんという魔力……そして確かに精霊の霊気を感じる! まさか、本当に精霊の武器なのか!?」


「ああ。ネアを倒したあと、戦利品として回収したのだ」


「なんと……!」


ノルドゥーラは驚愕の声を漏らす。


「おぬしのことを強いとは思っていたが、さらに認識を引き上げる必要がありそうじゃな。規格外という言葉では収まらん。おぬしはいったい何者なのじゃ?」


「ただの貴族だ。……いや、もと貴族というべきだな」


「貴族ごときに精霊が討てるものか。竜ですら精霊にする者など、伝説に知られた竜王りゅうおうぐらいのものじゃぞ」


「なんだ。精霊を倒せる竜もいるんじゃないか」


「いや……伝説の竜じゃぞ? 実在したかも怪しいうえに、竜の頂点とされる存在じゃ。そんな怪物とおぬしが同格だと考えたら、空恐そらおそろしく感じるわい」


とノルドゥーラがしみじみと告げた。

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