第3章83話:せめぎあい

正真正銘しょうしんしょうめいの本気というわけか」


と俺はつぶやきながら、クククと笑った。


「ならば俺も、遊びは終わりにしよう」


ミスリルソードをアイテムボックスへと収納する。


もう念力格闘術も、ミスリルソードも要らない。


ここからは、俺の本気のサイコキネシスによって、ネアをねじ伏せることにしよう。


ネアがつぶやく。


「焼き尽くす。その魂ごと、消滅させる」


そして。


次の瞬間。


ネアのもとに集中した光の魔力が、拡大を始めた。


全てを飲み込む黄金の光。


光に触れたものは、あっという間にこの世から消滅する……そんな、絶望的な力を持った聖なる灼熱しゃくねつだ。


あの光が拡大しきったら、この一帯は全て吹き飛ぶだろう。


周辺の大地は砕かれ、森はたいらとなり、山に住む生き物は一匹いっぴきのこらずえる。


俺は……それを阻止すべく。


最強のサイコキネシスを発動する。


「空間圧縮」


ネアに向かって手をかざし、静かに俺はつぶやいた。


直後。


拡大していた光が、制止する。


何かに阻まれたように拡大が止まる。


光の魔力の広がりを、サイコキネシスの【空間圧縮】で妨害したのである。


「!?」


ネアが目を見開いた。


「私の光を……止めた? バカな!?」


光の拡大は、【空間圧縮】によって、ジワジワと押し戻され始めている。


そのことにネアは相当ショックを受けているような顔をしたが、すぐに気を持ち直した。


「舐めるなァァッ!!!」


激怒げきどの声を上げて、ネアが両手をだいに開く。


まるで【空間圧縮】を跳ね返すような気合いだ。


実際、その気合いが形となって現れたかのように、ネアから強大なパワーが波動のように二度、三度と広がっていく。


「ぬあああああああっ!!」


ネアが咆哮ほうこうを挙げる。


じわじわと劣勢だった光が復活し、【空間圧縮】を押し返し始めた。


(盛り返したか……だが)


俺のサイコキネシスには、もう一段、上がある。


俺はさらに強力な【空間圧縮】でネアの光をつぶそうとした。


「なァっ!!?」


ネアが悲鳴のような驚愕の声を漏らす。


超級ちょうきゅうのサイコキネシスが、ネアのいる空間を圧殺あっさつしようと迫る。


それは周囲の大気や自然に絶大な影響を与え、小さなサイクロンのごとき旋風つむじかぜを発生させる。


空中にぎちぎちとひび割れたような音が、あちこちでこだましている。


俺たちの立っている大地にも地割じわれのような亀裂きれつが起こる。


自然災害しぜんさいがいすら引き起こしかねない【空間圧縮】の暴威ぼういだ。


神殿騎士団の兵士たちは、ただならぬ事態に悲鳴と混乱の声を上げていた。

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