第3章74話:vsアレクシア2
<ネアの視点>
「わからない……」
と、アンリの戦いぶりを見つめながら、精霊ネアはつぶやいた。
「あの能力は、いったい何……?」
アンリの魔力量は多くない。
神殿騎士団だけでも、ねじ伏せられるはずだ。
しかし現実には、騎士団だけでは手に負える相手ではない。
(魔力に起因する力ではない?)
とネアが推察する。
だが、そこまでわかっても、具体的にどういった能力なのかがわからない。
格闘能力を高める特殊スキルのようなものだろうか?
(いずれにせよ、他の者じゃ相手にならない。やはり……私が出るしかない、か)
とネアが決意を固める。
人間界に直接関与することは、ほとんどしないのが精霊の主義だ。
しかし、今回は例外である。
ネアは、アンリを殺すための戦闘準備をはじめた。
<アンリ視点>
今度は、俺のほうからアレクシアに接近する。
膝をついていたアレクシアが慌てて立ち上がる。
俺は下段からすくいあげるような斬撃を放った。
アレクシアもまた斬撃を放ち、合わせてくる。
「くっ!」
やはりアレクシアが押し負けて、後ろにザザッと後退する。
アレクシアが顔をしかめて、叫んだ。
「舐めるなァッ!!」
地を蹴り、滑空しながら、連撃を放ってくるアレクシア。
一撃。
二撃。
三撃。
四撃……と、目にも留まらぬ速さで打ち込んでくるアレクシア。
洗練された美しい剣だ。
精霊に操られてさえいなければ、素直に賞賛できたものを。
「……」
俺はアレクシアの剣を、淡々と受ける。
さばく。
いなす。
速く、美しい剣ではあるものの、アレクシアの剣が俺の肉体を切り裂くことはない。
俺は冷たい声音で告げた。
「誰かに操られた剣では、俺を倒すことはできん」
直後。
斜め上段の斬撃を、俺はカウンターのように放つ。
アレクシアは素早く、すくいあげるような下段によって、俺の剣を迎えようとする。
だが。
「え……!?」
アレクシアが驚きを示した。
俺のミスリルソードによって、アレクシアの剣が、バターのように切り裂かれたからだ。
刀身の半ばから切断された剣。
もちろん技術ではなく、サイコキネシスによる芸当である。
「馬鹿な……私の剣が……」
操られた虚ろな目でありながら、アレクシアが驚愕する。
その一瞬の硬直を、俺は見逃さない。
スッ、と滑るように近づいた俺は、アレクシアのみぞおちに掌底を叩き込んだ。
鎧をまとったアレクシアのみぞおちに、一撃を食らわせたぐらいでは、意識を奪うことはできない。
だからサイコキネシスにより、アレクシアへ
「が……、あ……ッ」
目をぐるんと回したアレクシアが、崩れ落ちる。
その場に倒れ伏して、動かなくなった。
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