第1章10話:事実

他の3人も、けわしい顔をした。


青髪の男が言う。


「本当だ。デレクのアイテムバッグじゃねえか」


「ねえ、それってもしかして……」


青髪の女が疑念ぎねんを口にする。


代弁するように赤髪の男が俺に尋ねてきた。


「テメエ……ぬすんだのか!?」


怒鳴るような口調であった。


俺は誤魔化ごまかそうかと思った。


勇者デレクを殺したことは、隠しておいたほうがいいと思ったからだ。


しかし……


別にバレてもいいか、と思う気持ちもあった。


だから俺は正直に答えることにした。


「盗んだわけじゃない。これは戦利品せんりひんだ」


「戦利品?」


「ああ。山の最深部さいしんぶでデレクに会った。そのときデレクに殺されそうになってな。だからかえちにして、このアイテムバッグを頂戴ちょうだいしたんだ」


全て正直に打ち明ける。


すると。


四人は爆笑ばくしょうした。



「「「「あはははははははは!!」」」」



腹を抱えて笑う。


こちらをバカにするような笑いであった。


赤髪の女が言った。


「あんたが、デレクを返り討ちにしたって? 有り得ないでしょアハハハハ!」


赤髪の男も告げてくる。


「バカじゃねーの!? お前、全然魔力がえじゃねえか? そんな雑魚がデレクに勝てるわけねえだろ!」


……なるほど。


どうやら俺がデレクを殺したことが、信じられないらしい。


無理もないか。


サイコキネシスがなければ、俺もデレクに完敗していただろうし。


サイコキネシスがあっても、俺の魔力量は低いままだ。


俺がデレクを殺したなんて、そりゃ信じられるはずもない。


ただ……


事実は事実だからな。


「ウソではない。俺がデレクを殺したのは、本当だ」


と俺は再度、告げた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る