でっちあげの罪によって国外追放された雑魚貴族、最強の『念力』スキルを手に入れたので、自分を追放に追いやったヤツをぶちのめした後、異世界を気ままに生きていく。

第1章5話：敵対

デレクは告げた。

「だからな、アンリ？　俺はお前と和解（わかい）することはない。俺はアンリが嫌いだからな」

「お、俺はアンリだが、中身は転生者だぞ！？」

「関係あるか。……第一、お前が覚醒したら、俺の厄介な敵になるかもしれん。だからここで始末しておく」

「！？」

し、始末するだと？

俺を？

それって……

「俺を、殺す……ってことか？」

「そうだ。俺はお前を、ここで殺す。ここなら人を殺してもバレないし、ちょうどいい」

「……」

マジで言ってるのか。

はは。

なるほどな。

よくわかったよ。

やっぱり、こいつはクズだ。

デレクじゃなくて、その中身……転生者のほうがクズなのだ。

こいつが俺を嵌（は）めたのも、己（おのれ）の私利私欲（しりしよく）のためだ。

許さねえ……。

「ほう。目に殺気（さっき）がこもったな？」

と、デレクが笑う。

「だが俺に勝てると思ってるのか？　現時点（げんじてん）のお前は、ただの雑魚だろ？」

「……くっ」

確かにその通りだ。

今の俺は、弱い。

たぶんデレクには手（て）も足（あし）も出（で）ない。

デレクは嫌味（いやみ）な笑みで言ってくる。

「自分の立場が理解できたか？　今のお前はゴミなんだよ。いいや、アンリなんて、存在そのものがゴミだ。死んだほうが世のためになる、最低最悪（さいていさいあく）のクズだ」

「ゲームでのアンリはそうかもしれないが、今の俺は違う」

「おい、口答（くちごた）えするなよ？　ゴミに発言権（はつげんけん）を許した覚えはないぞ。お前はもう、俺に殺されるまで黙ってろ」

「……」

舐めやがって。

何か、こいつをどうにかする力はないのか。

こいつをぶっ倒す力が……

そう思った直後。

俺の心に、呼びかけてくる何かがあった。

（使え……）

女の声である。

（わが力を、使え……）

その声がどこから来るのか。

すぐにわかった。

霊玉（れいぎょく）だ！

あの霊玉が、俺に語りかけているのだ。

俺がアンリだからか、直感的（ちょっかんてき）に、そう理解できた。