第038話 日曜の朝
俺達は科学館の屋根の下に入り、ギアからプレートを抜いて元の姿に戻る。
そこに、
「お疲れ」
「智陽ちゃんありがと〜!」
「そう言えば盗まれたものは何だったんだ」
「それが荒らされてはいたんだけど、わからなくって……あれ?望結先輩のお父さんは?」
「他の学芸員と一緒にもう1回確認に行った」
「そうか」
ひとまず、丸岡刑事に連絡を入れたほうが良いか。
そう考えていると、
「なぁ、俺はさっきから見鏡先輩が何も言わないのが怖いんだが…」
俺と
どうやら何かを考えているようだ。
由衣が見鏡先輩に近寄り「あの〜…見鏡先輩?」と話しかけるとようやくこちらに意識が戻ってきた。
「あぁ。ごめんね?ただちょっと…色々信じられなくて…」
それはそうだろう。だから魔術や魔法、神秘は隠されているんだ。
一握りの人間しか使えない力。「その存在が表沙汰になれば、社会は確実に混乱するだろう」それが協会の見解だ。
だからできるだけ、神秘に該当する星座騎士についても知ってる人を減らしたいんだが…
しかし、俺の考えとは反対に既に由衣は見鏡先輩への説明を始めていた。
☆☆☆
「つまり…由衣ちゃん達は怪物と戦っている。そして怪物の力と戦うための力は星座の力である。だから今日は星座について知れば戦いの役に立つと思い、ここに来た…と言うこと?」
「そうなんです…」
由衣はざっくりとだが全て話してしまった。
困った俺は額に右手を当てる。
だがまぁ、本当にざっくりとしか話していない。
ギアや星鎧、星力についての細かい話はしていない。
俺は由衣に協会など全てを話してなくて良かったと安心感を覚えてしまった。
それに話してしまったものは仕方ない。
記憶消去の魔法なんて俺には使えない。
由衣は「嘘ついてごめんなさい!」と頭を下げている。
見鏡先輩は「謝らなくて良いから」と言いながら、由衣の両肩を掴んで姿勢を戻させる。
「まぁ、確かに驚いたけど…そんな嘘では怒らないわ。嘘には誰かを守るための嘘だってあるもの。どちらかと言うと、星座の力で誰かを傷つける事のほうが許せない。だから私には何もできないと思うけど、応援はしてるから」
「望結先輩…!!あの!先輩さえ良ければ、これからも星座について色々と教えてください!」
「もちろん!私で良ければいつでも教えるわ!」
「やった〜!!望結先輩!連絡先交換してください!」
由衣と見鏡先輩はスマホを触り始める。
戦った直後だと言うのに元気だな…由衣は。
今日の戦闘時間は短く、消耗が少ないからか?
元気な由衣を見ながら謎の考察をしていると、志郎が俺に話しかけてきた。
「というか真聡。これ、どうしたら良いんだ?」
そう言いながら手に持っているもの俺に渡してくる。
それは、先程回収を頼んだプレートだった。
受け取る前に華山と見鏡先輩が来たので、後回しになっていた。
「これ、プレート…だよな?」
「そうだな」
「何座だ…?」
志郎に聞かれるが、俺はすぐには答えられなかった。
48星座までなら、だいたい予想ぐらいはできる。
しかし、それ以外になると流石に調べないとわからない。
俺はスマホを出して調べようとする。
しかし、その前に由衣と見鏡先輩がやってきた。
「これは左から六分儀座、八分儀座、そして望遠鏡座ね」
「先輩流石っす…」
「つまり全部何かしら天文に関係のある星座…」
「そういうことね」
「…六分儀と八分儀ってなんですか?」
「両方とも実物が展示されてるはずだから…見に行く?」
「行きます!…皆は?」
俺達3人は顔を見合わせる。
俺はやることがあるので案を出す。
「じゃあ、お前達は行って来い」
「まー君は?」
「俺はすることがある。お前らは先に帰っててろ」
「え、いやいや!私達もついて行くよ?」
「いや、いい。見鏡先輩、すみませんがお願いします」
そう頼むと先輩は少し戸惑いながらも志郎と華山と一緒に由衣を連れて科学館へ入っていった。
そして俺は電話帳に登録してある、丸岡刑事の番号に電話をかけた。
☆☆☆
あれから数時間後、ようやく科学館を後にする。
雨はもう止んでいた。俺は1人、駅に向けて歩みを進める。
あの後、超常事件捜査班に来てもらって盗まれたものがないか調査が行われた。
結果としては、盗難物はないと結論付けられた。
なので、盗まれた物は最後に回収しそこねた2枚のプレート。
俺達が回収したのが天文関係の星座だった点から推測すると、盗まれた1つはレチクル座ではないかと結論付けた。
そしてもう1枚については黒服の男が使っていたからす座ではないかと推測する。
つまり、盗まれたのは本当にレチクル座だけだろう。
レチクル座がどんな力を持つかはわからない。
しかし奴らの手に渡った以上、悪用されるのは目に見えている。
早く取り返さねば。
一方、俺達が回収した3つのプレートはそのまま持っていってくれと言われた。
科学館にあっても再び狙われるリスクがあるだけで特に使用できない。
それなら俺が持っておいたほうが良いという結論になった。
現状こちらも能力などはわからないが、ありがたい話だ。
今日の出来事を頭の中で整理しながら歩いていると、気づけば駅まで帰ってきていた。
特に寄り道をするつもりもないので、まっすぐ改札へ向かう。
「まー君!こっちこっち!」
後ろから俺を呼ぶ声がした。
一瞬空耳を疑ったが、どう考えても由衣の声だ。
振り返るとそこには予想通り、先に帰っていいと言ったはずの3人がいた。
調査の途中で見鏡先輩が様子を見に来たときに、既に帰ったと聞いていたのだが…。
そのため俺は疑問をそのままぶつける。
「何でいる」
「いや、何でいるはないだろ!」
「ね。わざわざ待ってたのに」
「でも私が言った通りの反応だったでしょ?」
由衣のその言葉に志郎と華山は「まぁ確かに」という反応をする。
どんな会話をしていたんだこいつら。
というか、俺の疑問の答えを貰ってないんだが。
俺はもう一度同じ言葉を投げかける。
「だって一緒に来たんだから、帰るときも一緒でもいいじゃん!」
「先に帰ってて良いって言っただろ」
「まぁまぁ。由衣は1人で頑張ってる
そう言いながら志郎はコンビニのビニール袋を渡してきた。
どうやら俺が超常事件捜査班と調査をしている間にコンビニに行っていたようだ。
俺は「怒ってはない」と言いながら、袋を受け取り中身を見る。
中にはスイーツが2つとミルクティーが1本入っていた。
俺は中身に思わず突っ込んでしまう。
「何で中身が甘いものに偏ってるんだ。」
「だって疲れたときには甘いものでしょ?」
…前にも聞いたな。
由衣から甘いものばっかり渡されるので、俺は甘党にされそうな危機感を覚える。
しかし、せっかく買ってきてくれたのでありがたく頂いておくことにする。
俺は礼を言いながら歩き出す。
改札を通ったあと、華山が隣に並んで話しかけてきた。
「今日初めてしっかりと
こいつはまだそんな事を言ってる。
俺は呆れながら否定する。
「だから違う。それに変身でもない」
「そうは言っても…似てるよ」
「知らん。最初に星鎧を生成したときからあんな感じだった。」
「ふぅん。ね、ベルトから音が鳴ったりさ、光ったりしないわけ?」
「しない。それにベルトじゃない、ギアだ」
そんな話をしていると、由衣と志郎が何を話しているのかと聞いてきたので説明する。
「日曜の朝のヒーローねぇ。昔は見てたな。今も見てるのか?」
「何。悪い?」
「いやいや!聞いただけだって!そんな顔しないでくれって…」
華山の顔を見ると凄い目つきで志郎を睨んでいた。
しかし志郎の弁解を受け、華山の目つきはすぐに普通に戻った。
「…今になって見ても面白いよ。子供の頃じゃわからなかったストーリーの深さとかもあるし」
「そうなんだ……私見てみようかな…?」
「俺も気になってきたな……ちょっと調べてみるか!」
そこにちょうど電車が来たので俺達は乗り込む。
由衣と志郎はシートに座ってスマホを見ながら会話をしている。
俺はドア際に立ち、何となくでガラスの向こうの外を見る。
すると華山がまた話かけてきた。
「ねぇ、じゃあ必殺技とか強化フォームとかは?」
「だから無いって言ってるだろ。何度も言わせるな。それに俺は正義のヒーローでもできた人間でもない。俺はただ、俺がやるべきことをやってるだけだ」
「…正義のヒーローじゃない…か」
その言葉を最後に華山は口を閉じる。
何が言いたいんだこいつは。
俺は再び外に目線をやる。
俺達はそのまま
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