第2話 転機

パリーン!!


机に向かい参考書を片手にノートと対峙する『ホシノヨシヒコ』のもとに


学校のマドンナ『オダミヤビ』は突然窓を割って現れた。


「えっ…………エエエッッッー!?」


「こんばんはホシノ君。ごめんちょっとの間身を隠したいの」


想い人の突然で予想の斜め上をいく押しかけに動揺するヨシヒコ。よく見たら彼女はケガをしていた。


「オダさん…………どうしたの?」


「今はナイショ!」


いつもの元気な言葉とは裏腹に表情は引きつっている。


「ヨシヒコ。今の音は何?」


母親が階段を上がる音がする


「…………こっち」


咄嗟に押入れに彼女を隠すと勢いよく扉を開ける母親。


「窓割ったの?」


「うん。ごめんなさい。蜘蛛が出てきて追い払ってたら窓に張り付いてそれで…………」


「そう。暫くお小遣いは抜くから」


「はい…………」


部屋を後にする母親。


「フゥー」


「ごめんなさいホシノ君。ありがとう」


押入れを開ける『オダミヤビ』はお礼を言いつつ部屋を出ようとする。


「!?」


ヨシヒコは『オダミヤビ』の腕を掴んでいた。


「ホシノ君!?」


「もう少し休んでいきなよ」


「ありがとう。でももう大丈夫」


「二の腕と太腿の傷。ガラス破って出来た傷じゃないよね?」


「ガラス破ってもこれくらいの傷はつくと思うけどな」


「オダさん窓ガラス破ったとき、身体を丸めて腕を交差して破ってるから二の腕と太腿の側面にそんなに綺麗な傷がつくのは考えにくいかな。それに」


「!?」


ヨシヒコは『オダミヤビ』の腕を上げる


「この腕の刺し傷は何?流石にこれは窓ガラス破って出来た傷じゃないよね?」


「……………」


「さっきのナイショと関係あるの?」


「これ以上君に迷惑かけたくないな」


そこにいる彼女は数時間前に学校いた彼女なのか?…………表情はいつもの彼女だが、ヨシヒコは不気味さを感じていた。


「どのみちその状態の君をこの夜道に1人にしておけないよ」


「ありがとう。でもホシノ君。これから私に関わるということは。もう君はこれまでの生活は送れなくなるよ」


「えっ…………」


普段と変わらない表情の彼女から発せられた唐突な言葉に動揺が走る。


「それでも、私を匿ってくれるの?」


その瞳に嘘は無い……………ヨシヒコは何故かそう思った。


「だとしても、今の君をこのまま放ってはおけないよ」


「……………ありがとう。じゃあこの窮地を脱する事が出来たらさっきのナイショの話教えてあげる!」


さっきまでの不気味さは鳴りを潜め普段の彼女に戻った。


こうして2人の長い旅路は始まった。

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