短編!ありそう異世界ファンタジー  by私の脳内

磨白

主人公とかつて戦った中ボスが助けにくるやつ

「クソッ、数が多すぎる!!!」


一人一人は大したことない軍勢。時間をかければ俺が負けることはないだろう。


だが今は時間がない。あいつの魔法陣が完全に完成するまでにこの城を攻略しなければ俺たちに勝ち目はないのだ。


殲滅するために魔法を放とうにも、俺一人じゃ溜めを作る余裕もない。


「邪魔だ!!!退いてろ!!!」


剣を横に勢いよく振り抜き、前方の敵を吹き飛ばすが焼け石に水。

次々と湧いてくる敵が、仲間の死体を乗り越えて迫ってくる。


それでもなんとか敵の大軍に穴を空けようとひたすらに攻撃を畳み掛け続けた。

しかし、それでも体力と時間が過ぎていく一方であった。


だから気が付かなかったのだ。


俺は後頭部に走った強い衝撃に大きくふらつく。


(転移石…油断した…)


普段なら反応できる転移石を使ったワープもこの混戦状態もあり、警戒が不十分だった。


不意打ちをモロに食らい、体制が崩れている俺に、敵はここぞとばかり襲いかかってくる。


時間がないからと焦りすぎたな……、


衝撃に備えて目をつぶった俺の耳に聞こえたのは人を殴る鈍い音だった。


…痛みはない。


俺が殴られたのではないなら一体何が……


「騒がしいから、見に来たらこんなところで何してるの主人公ちゃん」


「はッ……!何の冗談だよ、オリバー!!!」


俺の前に庇うように立っていたのは、かつて戦った犯罪者オカマだった。


「あらあら、その言い草は酷いわねぇ。折角アナタを助けてあげたのよ♡」


「犯罪者を頼ったりしねぇよ!!」


「残念ね、もう助けちゃったから遅いわ」


オリバーは敵陣に突っ込むと、拳一つで敵の大軍をぶっ飛ばしていく。


「アタシは魔法に頼らないからこういう足止めは得意なのよ」


そう言って怪しげに笑う。


「何が目的だ?」


「あらぁ、そんな顔しなくてもいいじゃない?アタシたちもコイツらが邪魔なのよ。だから出張ってきただけ。主人公ちゃんが行かなくても近々潰す予定だったし……ねぇ、主人公ちゃんここは一旦……」


「…ッチ。分かった、分かったから口に出すな。言われると立場上提案は受け入れられない」


「ふふふ、アナタも難儀ね。敵の大将は?」


「屋上」


「そう、じゃあここは任せて」


オリバーはそう言うと俺の体を持ち上げた。


「おいおい何して……」


「絵?何って、アナタを屋上まで投げるわ」


「はぁ!?!?」


「階段登るのも時間かかるし、どうせ中にも敵がいるでしょうから。これが一番効率的よ。大丈夫。力加減は気をつけるわ」


「そう言う問題じゃ…ッ!」


俺が言い終わる前にオリバーは大きく振りかぶって、俺を思いっきり放り投げた。


「いって、らっしゃーい!!!!」


「終わったら絶対牢屋に入れてやるからなぁぁあああ!」


俺の叫びながら屋上までロケットのように飛んでいった……













「さてさて、アタシもちゃんとお仕事しないとね♡」


そう言ったオリバーの右腕は肥大化しており、オリバーの大きな身体と比べても不自然な程の筋肉の塊へと変化した。


「アタシが遊ぶとと皆すぐ壊れちゃうから…♡、できるだけ長く逝かないようにガンバってね?」


オリバーが地面を蹴り、戦場を駆けた。


その数瞬後、辺りは肉塊が飛び散る地獄絵図となる。


戦いというにはあまりに一方的な鏖殺。


彼、いや彼女は誰にも止められない。


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