戦争はただ冷酷に〜短編シリーズ〜
信濃
1930年代
満州王国建国記 第一章 柳条湖の悲劇より抜粋
あの事件のことは、今でも忘れられませんよ。常識的に考えてみてください。自分の運転している列車が爆破されるなんて経験、普通するわけないじゃないですか。
え、爆破された後の車内の様子ですか?人の精神を意図も容易く破壊するような、地獄の光景が広がっていましたよ。
横転した列車内では、爆発の直撃を受けた人体の肉片が飛び散り、爆発によって亡くなった遺体が横転の衝撃で車内を飛び回っていました。
おそらく家族を失った女性が、自身の頭部から流血しているのにも気付かず狂ったように泣き叫び、爆発の衝撃で片腕を失った男性が、あまりにも酷い光景に血の上に嘔吐し、その光景に気絶する。
満鉄に勤務してから五年目の時に起きたことですが、流石の私でも十数分は何もできずに固まっていましたよ。乗客の救助活動は盲目的に行いましたが、本社や関東軍へ連絡するということにまで頭が回りませんでしたね。
あの事件から数十年経って、私が思っていることはただ一つ、私たちの子や孫の時代にこのような悲劇を再び起こさせては行けないということです。
〈満州王国建国記・第一章・満鉄車掌へのインタビューから抜粋〉
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