出会い2
冬の寒さが過ぎ、少しずつ春の温かさが訪れ、桜も満開の季節、1人の青年が美容学校を卒業し、美容室「Kirito『キリト』」に就職した。
高校を卒業後、国立大学に進学したが、3年の時に、美容師に憧れを持ち、大学卒業後、美容学校に進学した。
―――2年前―――
「笑輝お待たせ」
美容学校の休憩時間、笑輝と彼女の
「ねえねえ、今度の日曜、この映画見たいの。いいでしょ?」
「なんの映画?」
「韓国の映画なんだけど、ラブストーリーでね、この主演の女優さん大好きなの。」
「ラブストーリーかぁ・・・」
はしゃぎながらスマホを見せる粧子に対して、笑輝は、あまり乗り気じゃなかった。
24歳の男に恋愛映画を楽しめといっても、まあ無理な話しではある。
「なによ〜。この間は笑輝が好きなアクション物見に行ったじゃない。だから次は、あたしの番でしょ。」
「ん〜、仕方ないなぁ。」
笑輝がしぶしぶ答えると、粧子は喜んだ。
◇◇◇◇◇◇
映画館から出てきた粧子は、ハンカチで目を抑える。
「メッチャ良かった〜最後の主人公と相手が離れ離れになってからの、また再開するシーン・・・こらえたけど、無理だったぁ〜」
そう言うと、粧子はまた泣き出した。
「だからって、まだ泣くか?」
周りの人がジロジロみてくる。
笑輝は周りを気にしながら、粧子を車に乗せた。
「ごめんね、みっ君。」
粧子は、鼻の頭を赤くして言う。
笑輝は、そんな粧子が可愛くて仕方なかった。
粧子の頬に手を当て、そっと口づける。
「かわいい。」
そう言われて粧子は照れる。
「ご飯食べに行こうか。」
「うん。行く♡」
笑輝は、車を出した。
運転中、二人はずっと手を繋ぎ、信号が赤になる度に、軽く口づけを交わした。
二人にとって、とても幸せな時間だった。
オシャレなレストランに車を止めると、笑輝の隣に高級車が止まった。
ふと笑輝が隣を見ると、お人形のようなキレイな女性が助手席に座っていて、あまりの美しさに、笑輝は思わず目をそらした。
笑輝はドキドキが止まらなかった。
あんなにキレイな女性を見たのは初めてだった。
高級車の二人が車を降りた後、笑輝と粧子も車を降りた。
「笑輝、顔が赤いよ。」
粧子が睨む。
「え、そんな事ないよ。」
笑輝は冷静を装うが、バレバレだ。
「男って、ほんと綺麗な人に弱いのね。
あの人、綺麗だけど愛人よ。お金目当ての、
見ればスグわかる。」
「え!そうなの?」
―あんな綺麗な人が・・・女ってコワッ。
それに見抜ける粧子もコワッ。
粧子と笑輝も学校内では美男美女で有名なカップルだった。
粧子は157cmと小柄ながらもバランスの取れたスタイルで、顔は、どちらかというと大人びた切れ長の目のスッキリした顔立ちの美人だ。
笑輝は、身長186cmと大柄で、これまたモデルのようなスタイルだが、反比例するように
奥二重の笑うと少しタレ目がちになる黒目がちな目と、エクボと、少し幼く見える顔が魅力的な青年だ。
二人とも美容学校の学生時代なだけあって、ファッションセンスも抜群で、街を歩いていても、かなり目立つ存在だった。
二人は愛し合い、2年つきあったが、卒業間近になり、お互いの進路を決める時、粧子は海外に行きたいと決め、卒業と同時に別れてしまった。
笑輝はKiritoに就職が決まり、4月からスタイリストとしての生活が始まった。
初出社の日、目の前にキレイな背の高いスタイルの良い女性が歩いていた。
彼女は、10cmくらいのハイヒールにパンツスーツ、ベージュのゆるくウェーブのかかった髪を揺らしながら、そのまま同じビルの2階に上がって行った。
――2階の人か。
そう思いながら、笑輝は美容室に入った。
美容室に就職して、半年が過ぎた。
時間は9時前、そろそろ開店だ。
「笑輝、ポストの郵便物とってきてくれ。」
店長の長谷川瞬 30歳に頼まれ、笑輝は入り口のドアを開ける。
そこには、半年前に会った、ベージュの髪の長身美女が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます