第2話 現実は女児向けアニメの美少女着ぐるみアクター

そして今日もキャラクターショーの仕事だ。

いつものようにプニキュアの着ぐるみを着ていく。

着ぐるみを着用する前に少しでも男らしい骨格を隠すために彼は体型補正用のタイツを履く。そんな浅ましい小細工をするのも彼は自己嫌悪していた。

そして肌色の全身タイツ、肌タイを着てフリフリの可愛らしい衣装を身に纏う。

どんどん体が女の子に、プニキュアになっていく。

最後にマスク。

マスクの中は色んな人の汗や皮脂、息の匂い、唾っぽい匂いが染みついている気がする。

いくらメンテナンスはしているとはいえ、やはり染み付いてしまうのだ。

そして樹脂の特有の匂い。

そんなマスクに顔に押し付け、激しい動きでマスクが取れない様にひもでギチギチに締め付けらてもらう。


衣装に不備がないか鏡で確認する。

鑑には可愛いプニキュアの着ぐるみを着た彼が映し出される。


すこし動くだけでも短いスカートがひらりとまい、お尻や股間が露わになってしまう。

下半身はもっとも男らしい体型が出てしまう。体型補正はしているが注意して見れば男性だとわかってしまうだろう。


ショーチームの他のプニキュアにはみんな女性が入っている。敵役は男性。

彼だけ性別の異なる女の子の着ぐるみを着なければいけない。


キャラクターショーがはじまる。

今日の役は黄キュア。とっても可愛い女の子を象徴するようなプニキュア。

舞台を見守る沢山の女児たち。そしてお母さんさん達。そんな人たちの前で可愛い女の子として振る舞わなければならない。やはり恥ずかしい。


敵との戦闘の時は戦隊ヒーローの時と同様の殺陣がある。彼の本心は格好よくキレキレの動きをしたいのだが女の子という設定上、早く動き過ぎないように、柔らかさを意識し適度に力を抜いて女の子として動く。


問題は日常パート、

可愛い女の子の仕草でキャピキャピ動くことを意識する。ショーチームの女性陣に教わったように可愛く、女の子らしく、足と腕の角度に気を付けて、中身が男だと思われないように、女の子になりきって…


ショー部分が終り最後のダンスパート。

何回も練習した可愛い振りつけで、違和感がないように、可愛く、可愛く…


吐いた乾いた息がマスクの中にたまって抜けていかない。

暑い、汗びっしょりだ。

肌タイのいろんなところに汗染みができてしまっている。恥ずかしい。

彼は自分でもわかるくらい汗の匂いを感じていた。


ダンスパートも終わり、最後にショーを見に来てくれた女児たちとの撮影会と握手会。

ここが一番の鬼門。

決まった演技はないから素の可愛い女の子を演じなければならない。

そしてプニキュアに会えてニコニコの女児たちと一緒にカメラに撮られる、何枚も、何枚も。

この写真たちはきっとSNSにアップされて色んな人の目に入るだろう。プニキュアになった彼が晒されることになるんだ。考えただけでも恥ずかしい。

ママさんたちから見たら中身が男だってばれてしまうんじゃないか?

いくら低身長でも骨格や仕草で。相手は大人だし。彼は毎回疑心暗鬼になってしまっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る