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さぶろく

第1話 レイノルド基地襲撃

 1997年7月27日14時21分。サンフランシスコはレイノルド基地周辺で、所属不明の人型戦略兵器・レイダー数機が確認された。

 レイノルド基地所属のヨーク小隊にスクランブルがかかり、ヨーク小隊の駆るレイダー五機が、太平洋に向かい飛び立っていった。

 

 そして14時36分。太平洋上にて、ヨーク小隊はデータにない漆黒のレイダー八機を補足、すぐさま交信を試みるも応答はなし。漆黒のレイダーは陣形を組み、ヨーク小隊への攻撃の意思を見せた。


『敵機捕獲を最優先とするが、無理ならば撃墜もやむなしとする』


 レイノルド基地の司令部より、そのような指令がヨーク小隊に下りた。ヨーク小隊のレイダーが散開し、挟み込むように漆黒のレイダーとの距離を詰めてゆく。日頃の訓練がよくわかる、統率の取れた美しい動きだった。


 レイダー乗りであれば、その実力はすぐにわかる。それにヨーク小隊の駆るレイダーは、アステル社製の最新鋭機・ライトニングT‐5。

 けれど、漆黒のレイダーに動揺の色は見られない。機体の性能か、はたまた自身の腕を信じているのか、その動きには余裕すらうかがえる。


 最初に口火を切ったのは、ヨーク小隊の方だった。


 漆黒のレイダーの背後につけたライトニングが、その背面目掛けてビーム兵器・ラッドメリーの引き金をひいた。

 通常であれば、その距離で避けるのは難しい。よくてシールドで防ぐのがやっとだろう。

 けれど漆黒のレイダーはスラスターを噴かしてそれをかわし、振り返り様にビーム兵器の銃口を向けた。

 その瞬間、ライトニングのパイロットは即座に後退。目の前を、青白い閃光が通り過ぎて行った。


 オートシステム? いや、現行のそれは実践で使える様な代物じゃない。機体性能を抜きにしても、こいつらは相当の手練れだろう。それにこの動き、この違和感。こいつらの所属はどこだ?


 ヨーク・スローン少尉は冷静に戦況を分析しながら、手近にいた敵機に接近し、ビームダガー・セインツを腰元から抜き取った。そしてもの凄い速度で敵機の右腕を切り落とし、腹部に蹴りを入れた。

 右腕から火花を散らし、隻腕となった敵機が海面に向かい落ちてゆく。ヨークは追撃を加えようとラッドメリーを構えた。

 次の瞬間、別の敵機が自身に銃口を向けたのが見えた。ヨークはスラスターを噴かし、即座に射線から機体を逃がす。その脇を、閃光が駆け抜けてゆく。

 隻腕の敵機は落下途中で態勢を立て直し、後方へと下がっていった。それを援護するかのように、敵機がヨークへと向かってくる。


「こちらヨーク。戦況はやや不利。ホレス、アキナをすぐに寄越してくれ。繰り返す……」


 ヨークは通信部にそう伝え、すぐさま味方機の援護に回る。ヨークのパーソナルカラーである群青色に染められたライトニングが、稲妻のように快晴の夏空を駆けて行った。



 

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